コラム
知られざる女子刑務所ライフ95

元女囚が考える、マッキー&マーシー覚醒剤裁判――薬物依存はムショに行っても治らない

2020/07/12 16:00
中野瑠美改め瑠壬(作家)

 控訴審でマーシーが「志村けんさんの死をムダにしない」ちゅうたそうですが、そもそも控訴とコロナ関係ないし、ネットでも「志村さんのこと言うより、まず控訴するなや」とか「反省が見られない」みたいな意見が目立ちました。

 私はマーシーのファンですが、やっぱりちょっとそう思います。もちろん判決に不服があれば控訴はできます。まあ判決が確定していない未決囚のほうが、私服で面会できたり、手紙は毎日OKで、お菓子も食べられますから、ラクなんですよ。もちろん、お金があればですけど。

 一審ですぐムショに行くよりも、「ギリギリまで未決囚」を狙う不良も普通にいてます。でも、控訴審のほうが判決が重くなることもないとは言えません。ちなみに中野の「獄トモ」は、2人を殺して一審は懲役15年でしたが、控訴したら無期になってしまいました。まだ獄中(なか)にいてます。そもそも被告人だけが控訴することはまずなくて、検察もほぼしてきます。検察官は「前審より重くする気満々」ですから、控訴したら重くされる確率はけっこう高いです。「控訴すれば未決(のラクな)時間が長くなる」とならないこともあるんですよ。

 報道やとマーシーは「収監前に更生施設のプログラムを少しでも長く受けておきたい」と思ったらしいですし、マーシーの実子さんもツイッターで「刑務所に入って薬物依存が治るんだったらとっくに父ちゃん治ってるよ…」とつぶやいてます。ほんまそのとおりですが、世間様は「ええことやな」とは言わないと思います。

「適切な更生プログラム」って?

 ニュースやと、マーシーは「茨城県鹿嶋市の施設で生活」してるそうで、たぶんダルクの潮騒ジョブトレーニングセンターですね。この施設は再就職の支援でも有名なところです。ここでなるべく長くトレーニングして、懲役に行くちゅうことなのでしょうね。実子さんのおっしゃるとおり、ムショに行っても治りませんけどね。

 実子さんは、同じツイートで「こんなに再犯者が多いのだから刑務所の現状のプログラムでは無理だと思う。薬物依存は刑務所の辛さより欲望が勝つ恐ろしい病気。適切なプログラムを受けないと無理…」としていて、9,000人くらいの人がリツイートしてました。

 中野も同感ですけど、控訴は「黙秘権」と同じで、別に正当な権利は権利やけど、行使したら「ふてぶてしい」とかいわれるヤツです。一般人はええけど人気商売やからなあ、と心配になっています。お2人とも、まだこれからいろいろあると思いますが、お早い社会復帰をお祈りしてます。相談にも乗りますよー。

中野瑠美改め瑠壬(作家)

1972年大阪・堺市生まれ。覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年の懲役を経験。出所後は、刑事収容施設への差し入れ代行業や収容者と家族の相談窓口などを行う。現在は堺市内で「Night Space祭」を経営。著書『女子刑務所ライフ』(イースト・プレス)がある。

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Instagram:@rumichibi1209

瑠壬公式YouTube

最終更新:2020/07/12 21:16
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