「もう最悪です」中学受験生の母が語るコロナ禍の悲劇……自宅はゲーム天国、悲惨なテスト結果に“虚しさ”も
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
新型コロナウイルスの大流行は、私たちの暮らしに大変な災禍をもたらしているが、それはまた、中学受験の分野においても史上初めてというほどの混乱を招いた。
今現在においても、授業は配信のみ、模試は自宅で受験などという塾もあり、各校舎によっても対応はバラバラ。例年であれば、中高一貫校の合同説明会も花盛りの季節であるが、全て中止。当然、学校ごとの学校説明会もウェブが主流だ。
こういう現況下にあるので、特に小学6年生の親は不安を隠せない。今回はこのコロナ禍で、小6生の中学受験生親子がどのように過ごしてきたのかをレポートしてみたい。
恵理子さん(仮名)は5人家族。会社員の夫との間に、小6生の達樹君(仮名)と小学1年生の弟、さらに保育園児の妹がいる。
4月に緊急事態宣言が発令されると、恵理子さんの夫はリモートワークになり、達樹君の小学校も塾も休校措置が取られた。当然、弟も妹も休校、休園。恵理子さん自身は介護職ということで、普通に出勤という毎日だったそうだ。
恵理子さんは疲れ切った表情でこう訴えた。
「もう最悪です。2月までは達樹もやる気満々で、志望校に向かって頑張っていたんです。でも、主人との巣ごもり生活ですっかりやる気を失ってしまって……」
恵理子さんいわく、夫は今まで家事はおろか、子育てにもまったく参加してこなかったほどの仕事人間。それが、突然のリモートワークで3人の子の面倒をみることになり、頭を抱えてしまったそうだ。
「最初はZoom会議の時に、下の子たちを静かにさせる目的で、ゲーム機を与えたみたいなんです。今まで、やらせていなかった反動なのか、私が気づいた時には、達樹も含めて、子どもたちは“ゲームやり放題”の状況になっていました」
恵理子さんが夫に「塾が休校だから、きちんと計画通り勉強をやらせてほしい」と頼んでも、「わかった、わかった」と言うだけ。夫は子どもが自分に迷惑をかけず、静かにしていてくれるほうを優先させたため、「自宅はゲームとYouTube天国になった」という。
「塾も最初は動画配信だけで、課題もチェックされなかったため、達樹はまったくやっていなかったんです。当然、塾での学習内容は一切身についていませんでした。そうこうするうちに、自宅で参加する塾のテストがあったんですが、考えられないほど悲惨な結果で……。達樹は、もうすっかりやる気をなくしてしまい、主人も『やる気がないヤツに受験は不要』と言い出して、ウチはもう中学受験から撤退すると思います。今まで、私は何のためにあんなに頑張ってきたのかと思うと、全てが虚しくなりますね……」と恵理子さんはうなだれていた。