コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

医者になるための中学受験で挫折! 大学受験“全滅”、専門学校へ進んだ「開業医の息子」の反抗

2020/06/14 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 斗真君(仮名)の場合もそうだった。斗真君の家は、東北地方で祖父の代から開業医を営んでいる家庭。斗真君は長男であったため、幼い頃より、親族全員から「大きくなったらお医者さん」という期待を背負って成長した。

 やがて、中学受験を考える年齢に差し掛かると、当然のように週4日、家庭教師が来る生活になり、志望校も父親が決めたという。すなわち、全国の中でも医学部に強いと定評のある中高一貫校順に、志望校のラインナップを組んでいたのだ。

 斗真君は、その中にあった東京の私立中高一貫校に入学したが、自宅からは通えないため、母親と一緒に上京し、学校近くの賃貸マンションに暮らし始めた。つまり、父親とは別居という、逆単身赴任のような状態で通学するようになったのだ。

 それなりに学校生活は楽しかったらしいが、難関校の厳しさとも言うべきか、やがて斗真君いわく「落ちこぼれ」になってしまったそうだ。その学校では、落ちこぼれた者への救済措置として、補講が行われているものの、放課後に実施されるため、楽しみにしていた部活には、事実上行けなくなってしまったらしい。

 さらに、焦った母親によって、またしても家庭教師が付けられ、斗真君の生活はほとんどが「勉強時間」になったという。

 やがて、高1の秋を迎え、文理選択をすることになった。当然、斗真君の親は「理系」を推すのだが、肝心の斗真君は「文系」にしたいと言い出したため、親子の間に亀裂が入ったのだ。

 「数学が苦手なので、理系は嫌だ!」という斗真君と、「何がなんでも医者に!」という父親との言い争いは、文理選択〆切日を大幅に過ぎても終わらなかったそうだ。すると、父親は最終手段として、斗真君に「理系を選ばなければ、生活費と授業料を止める。お前は中卒として生きていくんだな」と告げたらしい。

 そこで、やむなく斗真君は理系選択をしたという。

 そして、2年が過ぎ、大学受験が行われた。多くのクラスメイトが順調に医学部合格を果たす中、斗真君は全滅。医学部どころか、受験校全てが不合格になってしまったそうだ。

 斗真君の父親は「医学部は3浪くらいまでなら、ゴロゴロいる! 斗真ももう1年、頑張れば絶対に医学部に行ける!」と言ったらしい。

 今度は医学部受験に強いという予備校に入るのだが、母親が祖父の介護で実家に帰ってしまったこともあり、結局、その予備校にはほとんど通わなかったそうだ。

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