老いゆく親と、どう向き合う?

高齢者住宅で女たちの大ゲンカ勃発! “ボスババ”と義母が取っ組み合い、仲良しグループ終焉のワケ

2020/06/21 18:00
坂口鈴香(ライター)

こんなはずじゃなかった

 ちなみに、このサ高住を選ぶ決め手となったのは、庭に野菜や花を育てるスペースがあったことだった。井波さん夫婦は、義父母が部屋に閉じこもることなく、この園芸スペースで少しでも活動的に過ごしてもらいたいと考えたのだ。

 しかしその園芸スペースでも、茂子さんの“天敵”ボスババがよく活動しているため、茂子さんは決して近づこうとはしない。「こんなはずじゃなかった」と井波さんは苦笑する。

 それまで何十年も、一切口答えすることなく夫に仕えてきた茂子さんは、終の棲家となるサ高住に入居してはじめて夫を断固拒否し、ボスババに対しても決して妥協しようとしなかった。

 「小さな子どもの社会のようだ」と井波さんは感想をもらしたが、茂子さんは、“長いものには巻かれろ”といった、いわゆる大人の対応をすることを一切拒否したといえる。

 茂子さんは、人生の最後くらい「イヤなものはイヤ」と自己主張しようと思ったのだろうか。それとも、認知症によって、茂子さんの本来の姿が明らかになったのか。


 井波さんにも本当のところはわからないというが、茂子さんの武勇伝はなんとも痛快だった。そのように生きられるなら、人生が楽になるだろうとうらやましく思う人は多いのではないだろうか。

 それにしても、終の棲家でも女どうしの人間関係に悩まされるとは……。そんなボスがいるのなら、イヤな夫の方がまだマシかも?

坂口鈴香(ライター)

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2020/06/22 19:54
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