「事故物件」はイメージアップできるのか? 不動産業界が考える「孤独死増加」問題
ーー近年、孤独死が増加しているという話を耳にします。東京都監察医務院の調査によると、2019年、東京23区内で一人暮らしの高齢者(65歳以上)が自宅で亡くなったケースは3,882件で、約20年前から3倍になっているそうです。
佐藤祐貴氏(以下、佐藤) 孤独死は高齢者だけの問題ではなくなっています。80代の親が、長年引きこもりを続ける50代の子どもの生活を支える「8050問題」に関連し、80代の親が亡くなった後、50代の子どもが一人で生活していけなくなり、孤独死してしまうケースも増えているんです。
花原 我々は、勉強のために特殊清掃の現場を見学させていただくことがあるのですが、半年ほど前、40代前半の方が孤独死され、2年近く発見されなかったという事例がありました。同居されていたお父さんが亡くなり、きょうだいとは連絡を取っていなかったそうです。そのまま残されていた部屋の様子は凄惨でした。
佐藤 若い人は、SNSの世界にしか友達がおらず、実際の社会とは距離ができてしまっている人もいるのでは。そうなると、亡くなって2〜3日で誰かに気づいてもらうことは困難です。最近では新聞を取る人も少ないですし、「郵便受けがいっぱいになっている」という理由で、安否を心配してもらえることもなくなりました。
ーー超高齢社会になると、孤独死はさらに増えると考えられます。そうなると、事故物件も、今後増加していきますよね。
花原 孤独死を起こさないための見守りサポートなども充実していくように思いますが、孤独死が増えることにより、事故物件を気にしなくなる人が増えるとも言えます。また現在は、孤独死のリスクがあるとして、高齢者の方が部屋を借りにくくなっているという問題もあるのですが、「孤独死によって借り手がつかない部屋を持て余す貸し手」と「孤独死リスクを恐れられて部屋を借りられない借り手」は、相性が合うのではないかと思っていて、今後、双方のマッチングサービスを展開していこうと計画しています。
ーー確かにそう考えると、事故物件は忌み嫌われるものではないなという気になります。
花原 海外だと、宗教観の違いから「事故物件」という概念すらない国も存在しています。今後、事故物件の不透明さをなくしていき、事故物件のイメージが変わることで、「売主・貸主」側と「買主・借主」側双方に、メリットが生まれるといいなと思いますね。