中学受験に母の出番は「ないない」!? わが子全員、トップ私立から東大へ……「スーパー母」の実態
紅子さん(仮名)も、筆者が「すごいなぁ」と思う母である。彼女のお子さんは二人とも、名門私立中高、そして東大を卒業しているが、紅子さんの場合は「どうせ学ぶなら、資金力がある東大がいいのでは」という理由で、子どもを東大に行かせようと思ったのだそうだ。
「子どもたちが小さな頃は、“夢中になれるもの探し”に、とことん付き合った」と言う紅子さん。例えば、子どもがどんぐり拾いに興味を示したら、とことんどんくりに向かい合う。数を数えてみたり、より遠くに飛ぶどんぐりはどういう形状のものかを予測して実践してみたり、切断して顕微鏡で中身を見てみたり、お風呂に浮かべてみたり……ついにはどんぐりの木を育てようとしたらしい。「試行錯誤したけど、木は発芽もしなくて、結果は失敗(笑)」と紅子さんは茶目っ気たっぷりに笑う。
「夢中になる対象物は、兄弟でも違うから、そこは慎重に見極めてたわね。最もいけないことは親が勝手に『これは良くて、これはダメ!』っていうようなジャッジを下さないってことかな? 本人が興味を示した物に対して、私もとことん付き合うって感じ?」
では、紅子さんは、子どもたちが小学生だった頃、教科の学習をどうサポートしていたのだろうか?
「とにかく、すっごくよく子どもの話は聞いた。絶対に『あとでね』とは言わないようにしたの。子どもに『あと』はないのよ。例えば、親に国語の教科書を読んでサインをもらってくる宿題があったとして、『ママ! 聞いて!』っていう瞬間を逃したら、もう読むテンションはだだ下がりよね。だから、何をしてても手を止めて、真剣に聞いて、真剣に良いところを評価するようにしたの。それで、『その内容はつまりどういうことを言ってるかママに教えてくれる?』って教えてもらっていた。ほかの教科も同じね。中学受験の時もそうだった。それに子どもの話を聞くことは、子どもが高校生になっても続けてたわ。数学とかは、もはや私には理解不能だったけど、お兄ちゃんが『数式の美しさ』を力説した時は、その気持ちだけ共感してたのよ(笑)」
筆者の元には、中学受験後を見据えた母親から「子どもを東大に入れたいのだけど、どのような英才教育を施したらいいのか?」というような質問も舞い込む。実際、そういう類の謳い文句で塾や教材を手がけている業者さんもある。
しかし、第3者が施す英才教育や早期教育よりも、子どもが小さいうちは「これ、楽しいね!」「これ、面白いね!」という生の経験をたくさん用意してあげるほうが、子どもにのびしろが生まれる気がする。
人生で起こる、あれやこれやを全力で不思議がり、楽しんできた親は、やはり、子育ても面倒くさがらずに、とことん楽しんでいる。もちろん、親として、「子育て戦略」であえてやっている面もあるだろうが、結果として、このような親の子どもは、高学歴であることが多いなぁという実感があるのだ。