付録ナシで雑誌を値下げ、発売日は遅延……新型コロナで打撃も「出版社にはプラス」!? 業界関係者が語る
そんな暗いニュースが飛び交う中で活況を呈しているのが、全国の小中高と特別支援学校の臨時休校を受け、出版社が無料公開し始めた電子書籍だ。学習マンガを取り扱っているKADOKAWAや小学館をはじめ、マンガを扱う出版社は次々と電子書籍を無料で提供している。とはいえ、タダで読ませてしまっては、利益につながらないと思うのだが……。
「もちろん、売り上げにはつながりません。ポイントは、“どこまで無料で読ませるか”でしょう。例えば集英社では、『ONE PIECE』を60巻まで無料で公開しています。『ONE PIECE』の最新刊は95巻。60巻まで読んだら続きを読みたくなるだろうし、無料公開後に、あらためてコミックを購入する人も出てくるでしょう。電子書籍販売サイトでよく実施されている、新規読者獲得のための“期間限定無料公開”と同じ仕組みです」(マンガ編集者)
新型コロナウイルスの影響で、付録つき雑誌の売り上げ減が懸念され、流通システムの見直しによる出版社への大打撃まで予想される半面、「本を読む人」は増えているのかもしれない。学校が一斉休校になったことで、子ども向けの学習書の売り上げは好調。都内大手書店の店員によると、「これまでになく書店に立ち寄る人が増えている」という。
その背景には、多くの娯楽施設が閉鎖し、在宅勤務が推奨されていることがあるようだ。これまでの出版不況の原因は、ネットの普及による本離れではないかと考えられてきた。しかし、実際には本を読む暇な時間を十分に確保できる人がいなかったということなのか……。筆者もここ2週間ばかりは対面で取材する機会が減り、電話取材が増えた。結果、確かに仕事場や自宅で本を読む時間は増えている。
一部では「むしろ業績が回復するのでは」との声も上がっているようだ。新型コロナウイルスは出版業界にマイナスの側面のみをもたらしているわけではなさそうだ。
(昼間たかし)