コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

大正天皇は“変わり者”か? それとも“お茶目”か? 女官たちが語る「遠眼鏡事件」【日本のアウト皇室史】

2020/02/22 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

『大正天皇 一躍五大洲を雄飛す』(ミネルヴァ書房)

――大正天皇もお気の毒ですね。

堀江 本当にその通りです。坂東登女子いわく、大正天皇は「私は以前、勅語の巻紙を開いてみたところ、上下が逆になっていたので恥ずかしい思いをした。だから上下が合っているかを事前に確認しただけなのだが」と言っておられたとか。

 ただ、あまりに何パターンも「遠眼鏡事件」については語り継がれているので、女官たちから「お茶目さん」といわれていた大正天皇は、自分がいろいろ言われていることを理解した上でブラックユーモアというか、ギャグのようにやってみせたこともあったのではないか、と思います。おそらく、何回も。そしてその都度、ギャグとしては歴史的な滑り方をして、周囲は恐れおののいてしまったので逆効果だったということかもしれません……。

 このようにさまざまな理由があって、大正天皇は日本国内では人気が高くはありません。外国のほうが研究が進んでいるくらい(フレドリック・ディキンソン 『大正天皇 一躍五大洲を雄飛す』)。

 それはともかく父帝とは違う天皇の像を大正天皇は作ろうと努力なさっており、それが身分を超え、誰にでもフレンドリーな態度にも反映されたのであろう、ということだけは推察できます。

――そんな大正天皇に対して少々厳しい目線を持っていたのが山川さんなんですね。ではそもそも、大正天皇の何が、山川三千子にはピンとこなかったのでしょうか? 次回に続きます。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

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最終更新:2020/03/05 13:34
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