「元極妻」芳子姐さんのつぶやき73 

六代目山口組に発砲した76歳のヒットマン——元極妻が考える、老ヤクザの生きざま

2020/02/16 16:00
待田芳子(作家)

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

ヒットマンは76歳

 2月2日午後、六代目山口組のナンバー2の自宅に発砲したヒットマンが76歳だったことが波紋を呼びましたね。引退してからだいぶたっているようですし、私の亡きオットの兄弟分たちも知り合いではないようです。銃をどこで調達したのかも明らかになっていません。

 このヒットマンが対立する神戸山口組の中核組織である山健組の関係者だったことで、対立抗争の火種との懸念もありました。ところが、六代目側はすでに、この件に関してカエシ(報復)を禁じる通達を出していることが一部で報じられています。 

 松葉会の事件の時もそうでしたが、最近は「特定抗争指定暴力団」指定を受けていることもあってか、カエシはしない方向になっているようです。

 それにしても76歳……。山健組事務所前の射殺事件のヒットマンは68歳ですから、やむにやまれぬ事情を考えてしまいますね。


今の若い不良は組員にならない

 1992年に暴力団対策法が施行されていますが、それからもしばらくは、ヤクザもヤクザらしく生きられていました。バブル期ほどではないにしても、経済的になんとかなっていて、抗争で組織のために鉄砲玉となった若者には、裁判費用や家族の生活、出所後のそれなりのポストを用意できていました。

 ところが、2011年までに暴力団排除条例が全国の自治体で施行され、景気もずっと悪いままなので、かなり厳しくなりました。正業に就けず、カタギのスポンサーやビジネスパートナーも激減したことで、違法薬物、オレオレ詐欺、博打くらいしかシノギがなくなってしまったのです。

 組のために長い懲役に行ったところで、服役中に組がなくなる可能性も否定できません。

「若いモンには(銃撃に)行かせられねえって、みんな言ってるよ。かわいそうだもん」

 オットの兄弟分の古参ヤクザは口をそろえます。少子化もあり、今どきの若いコはオレオレ詐欺の出し子などを手伝っても、盃を受ける(=正式な組員になる)ことは減っています。暴排のせいで、そっちのほうがラクだからです。今の若い不良は、ヤクザとも半グレともほどほどに付き合い、都合のいい時だけ犯罪の片棒を担ぐスタイルが増えてきていると聞いています。


 シニアのヤクザたちは、今さらそんな生き方はできません。ヤクザ組織から去るも地獄、残るも地獄となれば、シニアだって銃を取るという選択肢も出てきますね。

「持病もあるし、家族もいないから、俺も古巣のために最後に一花咲かせたいって、マジ思うことあるわ」

 タバコの煙を吐きながら、そう明かす70代もいます。その背景には、もちろん貧困もあります。とはいえ本当に高齢者がヒットマンになるのは簡単ではないですよね。でも、昨今の事件を見ていると、そんなこともあるのかなと思ってしまいます。居場所のない元ヤクザたちは、今後も行動を起こすかもしれません。

 毎度の結論ですが、過剰な暴排は本当に百害あって一利なしですよ。

【待田よりご報告】突然ですが、2月16日の深夜、ついにワタクシもテレビデビューと相成りました。以前も何度かお話をいただいており、あまりにもおこがましすぎるので、辞退申し上げていたのですが、ちょっと今回は魔が差したといいますか(笑)。
『村上マヨネーズのツッコませて頂きます!』という番組、関西テレビで厳密には17日の午前零時30分からで、関西限定なのですが、ご都合が合えばご覧いただきたいと思います。

待田芳子(作家)

待田芳子(作家)

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻。夫とは死別。本名・出身地もろもろ非公開。自他共に認める癒やし系。著書に『極姐2.0 旦那の真珠は痛いだけ』(徳間書店)がある。

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最終更新:2020/02/16 16:00
ヤクザ界も超高齢社会