「ギャンブル依存症問題を考える会」代表インタビュー

ギャンブル依存症は「普通」すぎて気付かない――見えにくい「犯罪率の高さ」と「嘘まみれ」の実態

2020/02/23 18:00
石徹白未亜(ライター)

一時の楽しみで済ませられる「愛好家」と「依存症」の境界線とは

――適切な範囲でギャンブルを楽しめる人もいる一方で、借金まみれの依存症になってしまう人もいる。この二つは何が違うのでしょうか。

田中 ギャンブルだけでなく、アルコールや薬物を摂取すると、脳内からドーパミンと呼ばれる快楽を感じる物質が分泌されます。依存症はドーパミンの機能不全が原因で、段々と耐性ができて量が増えていき、自分ではコントロールができなくなってしまいます。

 では、なぜ適性な範囲で楽しめる人と、依存になってしまう人がいるのか? これはもう、「病気だから」としか言いようがないと思います。同じような食生活をしている家族であったとしても、脳梗塞や脳卒中になる人もいれば、ならない人もいます。うちはガン家系ではなかったんですが、母親はガンになりました。それについて、「母親は何でガンになったんでしょうか?」と言ったところで、わからないですよね。「なんで?」となったとき、その人のパーソナルな部分に原因を求めてしまうんですが、それは違うと思います。誰だって病気になんてなりたくないんですから。

 ギャンブルをはじめ、アルコールや薬物などもそうですが、それらに手を出すと「一部の人たちはドーパミンの機能が不全になる“依存”という病気になってしまう」という点を、啓発するべきだと思うんです。自分が依存症になるとわかって始める人はいませんから。

子どもは依存症になるリスクが高い

田中 とはいえ、依存の発症に関して、明らかなこともあります。依存者は「年齢が若いうちから手を出している」こと、あとは「遺伝的要素を受けやすい」ということです。趣味や気晴らしの範囲で競馬を楽しんでいたお父さんが、レジャー感覚で中学生の子どもを競馬場に連れていき、馬券を買ってやったりしたところ、子どもが一気にギャンブル「依存」までのめり込んでいき、暴力を振るうようになった。さらに親戚に金を無心したり、人が変わったようになってしまい、ものすごく後悔されていた親御さんもいました。年齢は大きな要素です。


――競馬や競艇は人気タレントを起用したCMでレジャー感覚を打ち出していますが、依存まで発展する可能性がある以上、軽い気持ちで人を誘うのは危険ですね。

田中 結局、ギャンブル依存症になる原因はただ一つ、「ギャンブルをやったから」です。ギャンブルをやらなければ、ギャンブル依存には絶対、なりません。ギャンブルをやった人の一部がギャンブル依存症になるリスクがある、ということなんです。それはあなたかもしれないし、あなたの配偶者、子ども、友人、同僚かもしれないし、誰がなるのかはまったくわからないのです。

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後編(明日24日に公開)では、ギャンブル依存症の治療が4月から公的医療保険の適用対象となった件について、田中氏に話を聞く。


石徹白未亜(ライター)

石徹白未亜(ライター)

専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。ネット依存を防ぐための啓発講演も行う。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)など。

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最終更新:2020/02/23 18:00
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