「いきなり!ステーキ」社長メッセージが反発呼ぶワケ――校正者が「客を追い返す文章」と一刀両断
実際に店頭に掲示された張り紙を見てきたというA氏は、開口一番「社長直筆の文字が紙いっぱいに書かれているさまは、『耳なし芳一』を連想せずにはいられず、ゾッとしてしまいました(笑)」と率直な感想を述べる。そして、真っ先に “赤字”を入れたくなった箇所として、「店名」を挙げた。
「第1弾、第2弾ともに、社長自ら店名の誤表記をしています。『いきなり!ステーキ』が正式名称なのに、『いきなりステーキ』と表記しており、これはいただけません。たとえ手書きで書いたとしても、1店舗に貼り出しているものではなく、コピーしたものをプリントアウトして全店舗に掲示している、いわば公式文書だけに、店名は正しく記すべきでしょう」
続けてA氏は、「改行もでたらめで読みにくい。実は読んでほしくないのかなとさえ思えてきます」と校正者としての目を光らせる。また、第1弾の「お客様のご来店が減少しております このままではお近くの店を閉めることになります」という部分や、第2弾の「御新規のお客様が硬いステーキを食べられた時、もう二度と来られないばかりか、悪い口こみが店を台無しにします」という部分などに、「やはり社長の『上から目線』を感じた」そうだ。
「これを店頭に貼るということは、つまり、これから店に入ろうとするお客様に向けて、その目線を送っているわけです。そもそも、来店数が減少し、閉店が続いている、このままでは近くの店まで閉めることになるぞ……というのは、上から目線どころか、ご来店のお客様を“脅し”にかかっているようにも見えます。この文面では、せっかく店まで足を運んでくれたお客様を追い返しかねません」
総じて、一企業の社長が発信するメッセージとしては、あまりにも欠点だらけのように見えるが、A氏は「『今どきこういう拙さがSNSでウケるんだよ』または『自虐的でストレートなメッセージの方が、ネット上では面白がられ拡散するんだよ』といった発想かもしれない」と考察を繰り広げる。
「しかし、天然ではなく、狙って実行してしまうと裏目に出るのが今の世だけに、校正者としてはSNSウケを意識することはオススメできません。また、直筆というのも気になりますね。ラブレターじゃないですが、シンプルに『手書きこそ思いが伝わるんだよ』などとお考えかもしれません。ただ、その思いが情念のようなものであった場合、読み手にその念が伝播してしまうことの『はた迷惑』を考えられる経営者であってほしいと思いました」
A氏が足を運んだのは、新宿西口店とのことで、数ある店舗の中でも繁盛店なのか、当時行列ができていたそうだ。しかし、問題の直筆メッセージは、お客様から読みにくい場所に掲示してあり、そうなると、「もはやただの落書きで、よく言えばグラフィティ、社長のパフォーマンス作品……あるいはポエムと捉えると微笑ましくもあるかもしれません。メッセージの内容から掲示方法に至るまで、社長に社内の誰かが『いかがなものか』と忠告すべきだと思うのですが、ワンマン経営者はたいていイエスマンを従えますから、期待できない話でしょう」。