サイゾーウーマンコラム自宅を燃やした弟は、ADHDだった コラム 【連載】傍聴席から眺める“人生ドラマ” 自宅を燃やした弟は、ADHDだった――「もっと早くわかっていれば」兄が法廷で語った後悔 2020/01/24 21:00 オカヂマカオリ(ライター) コラム傍聴席から眺める“人生ドラマ” 逮捕されるまでわからなかった障害 兄によると、10年ほど前、借金をつくった父親が実家を立ち退くことになり、Y男と一緒に自宅へ受け入れたのが、同居のきっかけだったといいます(母親はY男が30歳のときに死去)。その後、病に倒れた父親の介護をしつつ、兄は正社員として働きながら借金を返済。今から5年前に父親が死去し、兄弟2人だけの生活になったそうです。転職や無断欠勤を繰り返すY男を、兄は自分が勤める会社に入社させるなど、かなりがんばってサポートしてきたよう。証言台で淡々と語る言葉の端々から、兄の苦労がうかがえます。 Y男は2歳の時、全身がけいれん・硬直し、白目をむいて口から泡を吹く「引きつけ」を起こしたそう。家族はこれにショックを受け、それ以来、Y男とは「腫れ物に触るように接してきた」とのこと。引っ込み思案で、人付き合いが苦手だったというY男。小学校ではいじめられていたものの皆勤賞で、性格はまじめだったといいます。 兄は、Y男が40歳の時に「しゃべることが幼稚でおかしい」と気がついたそう。無断欠勤を叱ると幼児のように泣き、「人と会うのが怖くて、店頭にも出られない」との理由でスーパーの仕事を辞めたというY男。「早く(Y男の障害が)わかっていれば、もっと楽に生きられたのでは……と思います」と後悔を語る兄の姿は切なかったです。 今回の事件がきっかけで精神鑑定を受け、Y男に診断が下されたことで、仕事が続かなかったり、人間関係がうまくいかなかったりなど、「モヤモヤしていたものが(わかって)ちょっとホッとした」と述べた兄。「出所後は施設に入れて、別々に住むことになるが、できるだけのことはしたい。(事件については)親戚にも言わない」といい、Y男はソーシャルワーカーのサポートを受けて、自立を目指すそうです。 事件以来、久しぶりに会ったY男について、兄は「健康的になった。当時は気になるぐらい顔色が悪かったのでホッとした」と語り、心から安堵した様子を見せていました。この2人はきっと、これからも支え合って生きていくのでしょう。 「裁判員裁判」は傍聴初心者にオススメ ちなみに、今回は「裁判員裁判」でした。「裁判を傍聴してみたいけど、周囲に詳しい人がいない」という方には、裁判員裁判の事案がオススメです。普段は裁判官や検察官、弁護士といった法曹関係者のみでやりとりをするため、専門用語がわからなかったり、傍聴し慣れていなかったりすると、チンプンカンプンな点が多々あります。でも彼らは、裁判員がいると一般人にもわかるよう、きちんと説明しながら裁判を進行してくれるのです。いつもはものすごい早口でしゃべる検察官や弁護士も、ゆっくり話してくれますよ(笑)。 また、普段は裁判長に提出するだけで中身は見られない証拠書類を、大きなモニターに映し出すなんていう優しさも。いつ・どんな裁判員裁判が開かれるのかは、裁判所に電話で問い合わせれば教えてくれますので、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。 前のページ12 オカヂマカオリ(ライター) 絵も描くライター。傍聴デビューは結婚詐欺師のクヒオ大佐。興味を持った方は古書店で『裁判トリセツ』(インフォバーン刊)を探してみてください。 記事一覧 最終更新:2020/01/24 21:00 Yahoo 大人のADHD もっとも身近な発達障害 「気がつく」ことって大事だね 関連記事 アラサー独女、5つの罪で逮捕――裁判で明らかになった「移住した離島の特殊な環境」とは“ハプニングバー”好き有名人と不倫――「紅白歌手・Xに会える」と信じたアラフォー女の「ストーカー裁判」中国人女性との“偽装結婚”を手助け――「誰からも好かれる人」が「被告」になった理由「“商社のノリ”を教えてあげる」と誘って強姦……“勝ち組”被告の卑劣な手口「準強制性交裁判」元KAT-TUN・田口淳之介「カップル裁判」のウラで……“猫”に助けを求めた42歳女の「大麻所持裁判」 次の記事 平野紫耀、池谷幸雄に叱責され謝罪 >