サイゾーウーマンコラム老夫婦、妻の決断「夫のことは支えるが……」 コラム 老いゆく親と、どう向き合う? パート先の介護サービスがきっかけに――老夫婦、妻の決断「夫のことは支えるが……」 2020/01/26 19:00 坂口鈴香(ライター) 老いゆく親と、どう向き合う? “「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける” ――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社) そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。 mihomiho7さんによる写真ACからの写真 折田真由美さん(仮名・51)は、最近「夫婦ってなんだろう」と、しきりに考える。夫の稔さん(仮名・55)の義父母は、ケンカの絶えない夫婦だったが、義母がパーキンソン病になり体が動かなくなっていくと、義父がかいがいしく介護をするようになった。「夫婦はいくらケンカをしていても、最期はお互いを思いやるものだ」という折田さんの母の言葉を何度も思い出している。というのも、エリートサラリーマンだった稔さんが起業したものの、二度の倒産で暮らしが激変したからだ。 (前編はこちら:年収2000万円のエリート夫が二度の破産――「夫婦ってなんだろう?」と妻が自問するワケ) こんなときこそ夫を支えるべきなんじゃないか 二度目の倒産後は、稔さんが50歳を超えていたこともあり、職探しは難航した。50社ほどに書類を出し、面接までこぎつけても、「なぜあなたのような立派な経歴の人が」と驚かれて「うちにはもったいない」と採用を断られる。 「最初の会社を辞めたときが40歳。もう一花咲かせたいと思ったんでしょうが、あのとき反対しておけば……と何度も後悔しました。下の息子は、生活が苦しい思い出しかないと言っています」 いっそ離婚した方がいいのではないか、と思ったこともある。しかし、義父母の関係を見て、「自分も夫を支えないといけないんじゃないか」と思い直した。 「夫も、子どものことはかわいがっていましたし……」 折田さんは、友人にはこういった話はできなかったという。 「こんなどん底の生活、愚痴を聞かされても困るでしょう。母も年を取っているので、心配はかけられません。肝心の夫は毎日部屋にこもりっきりで、何をしているのか、何を考えているのかわかりませんでした」 そのころ、折田さんはデイサービスでパート勤めをしていた。介護ヘルパーの資格はなかったが、人手不足だったので採用されたという。送迎バスにも乗った。運転していたのは、折田さんよりも5歳ほど年下の男性。折田さんのように、送迎だけをするパート職員だった。毎日顔を合わせるうち、次第にその男性に家庭の話をするようになった。 次のページ その男性の存在に救われた――夫を支えようと思うが、もう好きではない 12次のページ Yahoo 老夫婦が壊される 老老介護の地獄度と、劣化する社会保障 関連記事 「あなたは何もできない」蘇った母の呪縛――老母と暮らす50歳の娘の苦悩老人ホーム、入居者の“愛人”疑惑の老女――高齢者は“清く正しい”ワケじゃない?【老いてゆく親と向き合う】「正直、またか」「帰宅しても誰もいない」遠距離介護に励む妻、夫の“意地悪”な本音有料老人ホーム、職員の“全員辞職”で起こった変化――「入居者を守る」の意味有料老人ホーム、「入居者家族とは一切しゃべるな」新人介護士への理不尽な命令