“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験生の娘は「O女子」志望! 「女子校」でイジメ経験……トラウマを持つ母の葛藤

2019/11/24 16:00
鳥居りんこ

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 

 私立中高一貫校の受験校を選ぶ時のポイントの1つに「別学か共学か問題」がある。別学とはいわゆる「女子校」「男子校」を指すのだが、数は少ないものの「併学」という学校もある。これは、同じ学校敷地内で、女子と男子が別々に授業を受け、部活動や学校行事を一緒に行う学校のことである。

 中学受験は「自分の行きたい学校に行く」ということが基本なので、「別学か共学か問題」にしても、各家庭の好みで選べば良いだけの話である。しかし、親自身が女子校・男子校出身であれば共学校のことが、逆に共学校出身であれば別学校のことがイメージしにくい面もあり、これがなかなかに悩みの種になりやすい。


「女子特有のイジメは男子がストッパーになる」と信じていた母

 明奈さん(仮名)は女子校出身者であるが、自分の母校に良い印象を持っていなかったために、娘である由奈ちゃん(仮名)には共学校に行ってほしいと望んでいた。

「私、共学の公立中学から、女子だけの高校に入学したんですが、合わなかったんです。仲間外れっていうんですかね、軽いイジメの対象になっていて、すごくつらい青春時代を過ごしました。もちろん、暴力などはありませんでしたが、微妙にハブられているのが、空気でわかるんですよ。しかも、グループが固定化されるので、ほかに移ることも難しい……。でも、女の子は賢くて、先生の前では絶対にそういう素振りを見せない。ですから、先生に言っても無駄だったんです……」

 大学生になった明奈さんが、共学の高校出身の子に話を聞いてみると、「『そういうことはなかった』ってことがわかって、すごくショックでした。私は中学の頃は、楽しく学校に通えていたので、そのとき私は、『やっぱり男子がいるということが、女子特有のイジメのストッパーになるんだな』って思いました。だから、娘にだけは、そういう思いをさせたくなかったんです」。

 ところが、由奈ちゃんが志望した学校は女子校。明奈さんがいくら共学校を勧めても、「私はO女子に行く!」と言って聞かなかったそうだ。小5の時、近所の憧れのお姉さんが通っているO女子の学園祭に行って以来、その魅力に惹きつけられたという。制服の可愛さ、図書館の木漏れ日、大好きな英語を思いきりできる環境、そして何よりも部活の素晴らしさに目を輝かせたそうだ。

 明奈さんはO女子の先生にも生徒にも、繰り返し「イジメ問題」を尋ねたというが、そのたびに、いつも明るく否定する声が返ってきたという。


 O女子は「学校生活では、友人同士のトラブルが必ず起こる」という前提で、入学直後から3日に一度の席替え(高3でも2週間に一度という頻度)を実施している。これは「女子は『秘密の共有』で結び付くことが多く、それに縛られて、小さな集団で固まる傾向がある」「そのことがトラブルにつながる」という考えによる取り組みであり、実際にこの席替えを繰り返すことで、子どもたちは30人のクラスメイトみんなと自然な形で友達になれる環境がつくられているという。O女子は、「焦って友達をつくり、小さな集団にまとまるな」「さまざまな子と交流せよ!」という方針を貫いている女子校として有名なのである。

 このように、女子校や男子校は、長年の経験から、「女子の生態」「男子の生態」を知り尽くしているケースが多い。それをうまく活用している別学校は、進学面でも十分な成果を上げている。由奈ちゃんは初心を貫いて、無事にO女子に入学。「毎日、楽しくて仕方ない!」という話を明奈さんにしているらしい。

「結局、『共学校より女子校の方が、イジメが多い』というのは、私の偏見でしかなかったんですよね……。女子校、共学校ってくくりではなく、その学校特有の文化が醸し出す空気が我が子に合うかどうかが大事なんだなってことが、よくわかりました」

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