インフルエンザ予防に「紅茶」は真っ赤なウソ!? 「予防接種が一番」と感染症の医師語る
――ハチミツも「インフルエンザウイルスの増殖を抑制する働きがある」などと言われているのですが、これも同様に、インフルエンザという「病気」に利益があるかどうかはわからないですね。
岩田 そうですね。ただハチミツは、咳が出る際、咳を抑える効果があるというのは立証されています。理由はよくわかっていないのですが。
――ほかにも、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌を摂取すると、免疫力がアップし、インフルエンザ予防に役立つと言われています。
岩田 まず「免疫力が高まる」というキーワードを使っている人がいたら、ほぼ「インチキ」と思ってもらって構いません。というのも、免疫力はいわば「調整機能」なので、そもそも「高まる」ことはあまりなく、高まりすぎると、自分の体を攻撃し始め、リウマチなどの自己免疫疾患の原因にもなります。一方、免疫力が低くなることはあり、典型的な例で言うと、エイズは免疫力が低すぎる状態になる病気です。つまり免疫力は高すぎても低すぎてもよくないもので、「免疫力が高まる」ことを「よいこと」という前提で話している時点で、それはほぼインチキと言えるでしょう。「免疫力を上げよう」という書籍や雑誌、また自費診療のクリニックもありますが、これらはほぼインチキでぼったくり。しかしそんな中、唯一わかっている免疫力を上げるものが、ワクチン。これは、「ある病原体」に対する免疫力を上げることによって、その病気にかからなくすることが立証されているのです。
――ということは、乳酸菌は「免疫力を整える」効果はあるのでしょうか。
岩田 多少はあります。しかし、そもそも乳酸菌という名前の単一の菌は存在しません。乳酸をつくる菌の総称を「乳酸菌」と呼んでいるに過ぎず、どの乳酸菌なのかによって、それぞれ作用が違うものなのです。乳酸菌の一つである菌が、確かに健康に利益をもたらすという研究はあるのですが、一方で利益はないとの研究もある。どの菌がどの病気のどういうことに利益があったり不利益があるかは、一つひとつの論文を検証しなければならず、ざっくり「乳酸菌がインフルエンザ予防にいい」と言われても、いいか悪いかは判断できません。