電車内でのベビーカー利用は「ルール化すべきでない」――ネット上の論争が見落としていること
ベビーカーで公共交通機関を利用する際、肩身の狭い思いをする人が後を絶たない――ここ何年か、そんな話をよく耳にする。乗客から「邪魔だ」などと直接文句を言われたり、舌打ちされたといった親の体験談がネット上で散見され、親たちへの共感や同情の声が上がる一方、「混雑時にベビーカーで乗って来るのは避けるべき」「スペースを取るからベビーカーは畳んで」「ベビーカー利用者のマナーがなっていないのでは」といった意見も寄せられるなど、“論争”に発展することも珍しくない。
そんな中、7月31日から、都営大江戸線で「子育て応援スペース」を設けた車両が試験導入されていることをご存じだろうか。これは、市民団体「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」が小池百合子東京都知事と面会し、電車や地下鉄における「子育て応援車両」設置を求める要望書を提出し、実現化されたものだが、実施の告知がされると、ネット上ではこれまた賛否両論が飛び交うことになった。
大江戸線の「子育て応援スペース」導入開始から4カ月がたとうとする現在、果たして東京都交通局には、どのような反響が寄せられているのだろうか。また今回、「NPO法人せたがや子育てネット」代表理事、「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」理事の松田妙子氏に、子育てをする人たちがストレスなく、公共交通機関を利用できる社会になるために「必要なこと」は何か、話を聞いた。
大江戸線の「子育て応援スペース」に感謝の声
現在、大江戸線の車両全58編成のうち3編成の3号車と6号車に導入されている「子育て応援スペース」。車内には、子どもに人気のキャラクター「きかんしゃトーマスとなかまたち」を使用した装飾が施されているが、東京都交通局の公式サイトによると、「小さなお子様連れのお客様だけでなく、お年寄りや車いすをご利用の方など、どなたでもご乗車いただけるスペースです」とのこと。スタートから4カ月弱、どのような「お客様の声」が寄せられているのだろうか。
「『子どもが騒ぐのではないか』といった声も一部ありましたが、『非常に素晴らしい取り組み』『子育て世代としては本当にありがたく感謝』『「子連れで電車に乗っても問題ないよ」と背中を押してもらったようで安心して電車に乗れた』など、多くは感謝や賛同といった好意的なご意見をいただいています」(東京都交通局)
また、実際の利用者に関しては「誰でもご利用いただけるスペースとしてご案内しておりますので、小さなお子様連れのお客様だけでなく、お年寄りや車いすをご使用の方、通勤中のサラリーマンなど、さまざまなお客様にご利用いただいています」(同)という。
なお、「子育て応援スペース」は、「来年3月までに7編成に拡大する方針で現在準備を進めているところです」(同)とのこと。大江戸線に限らず、首都圏のJRや地下鉄では、各車両に、車いすやベビーカーを置ける「フリースペース」が設置されるようになるなど、鉄道会社側の子育て環境への配慮は、じわじわと広がりをみせているようだ。