『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』友人が語る船戸雄大被告の実像『親になろうとしてごめんなさい~目黒・結愛ちゃん虐待死事件~』

2019/10/28 20:36
石徹白未亜

 根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。10月27日の放送は「親になろうとしてごめんなさい~目黒・結愛ちゃん虐待死事件~」。船戸雄大被告の実像とは。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 2018年3月2日、義父の船戸雄大被告による虐待の末、結愛ちゃんは衰弱死する。119番通報したのは雄大被告自身だった。結愛ちゃんは亡くなったとき体中に170カ所以上の傷があり、5歳の女の子の平均体重が19.9㎏なのに対して、わずか12.2キロだった。雄大被告は一審で懲役13年の判決が出ている。

 この事件は結愛ちゃんが雄大被告に書かされた「反省文」も報道され、その悲痛な内容を覚えている人も多いだろう。

「ゆるしてください おねがいします
あそぶってあほみたいだからやめる
もうぜったいぜったいやらないからね」
(メモの一部より)

 5歳の子どもに「遊んだ」ことを反省させ、真冬に冷水のシャワーを浴びせ、冷え切ったベランダに立たせ足をしもやけだらけにさせた雄大被告。一方で彼の友人や職場の上司からは「バスケのうまいクラスの人気者」「幹事を率先してやってくれる」「職場では高齢の社員にPC操作を教えてくれていた」といった声が上がる。そして雄大被告は、裁判で「私が親になろうとしてごめんなさい」と口にした。


雄大被告、世話焼きで見栄っ張りの一面

 雄大被告は世話焼きで、人付き合いにアクティブだ。大学時代のバスケサークルの友人は体育館の予約など面倒なことをしてくれたと話し、最初に東京で勤めた通信系の会社でもいつも幹事を率先していたという。香川で勤務した会社では、年配社員にパソコン操作も優しく教えていた。プライベートでもバーに通い、カウンターで知り合った人を兄のように慕い、自身が転居したのちもLINEで交流を続ける。人付き合いに積極的で、世話好き。その場さえ楽しく交流できればいいタイプでもなく、関係を継続させていくマメさもある。

 多少は無理をしたり、他人の面倒をイヤイヤ見ていたところもあるのだろうが、本当に人付き合いが嫌で億劫なら、幹事やパソコン操作の指導はやらないだろう。周囲からも、人が好きで、楽しいことも好きな人物として見られていたようだ。

 そして雄大被告は、見栄っ張りで派手好きでもあった。最初に通信会社に就職した際は、品川のベイエリアのマンションに住み、会社の同期を招待するなど、わかりやすい方向に見栄を張る。通信の仕事に不満を覚えるようになると、故郷・札幌で会員制バーのボーイに転身。その後、友人が香川でやっているキャバクラの人手が足りないと伝えられると、縁もゆかりもない土地ながら、頼られたことで世話心がくすぐられたのか、居を移す。そこで、シングルマザーだった優里被告(一審で懲役8年、控訴中)と、娘の結愛ちゃんと出会ってしまう。

 雄大被告の妻、優里被告は裁判で「私が社会に出たときに無知だったので、雄大はすごく幅広い知識を持っていて教えて欲しいと思いました 」と話す。「世話焼き」で「見栄っ張り」な雄大被告が、優里被告の目に「頼れる」と映ったのは想像に難くない。雄大被告は、結婚後に地元の上場企業に転職を決める。

 優里被告にしてみれば、当初は上々の再婚に思えたのではないか。しかし、優里被告も雄大被告のDVの被害者になり、説教や立たされて叱ることなどが日常的に繰り返される。近所の住民は優里被告が結愛ちゃんを「あんたがそんなやけん、ママがパパに叱られるやろ 」と叱責する姿を目撃している。


 なお、これは番組内では触れられていなかったが、裁判の傍聴記事では、雄大被告は優里被告との結婚前から結愛ちゃんに手を上げていたと話すが、優里被告は結婚前は雄大被告と結愛ちゃんの関係は良かったと言い、食い違いを見せている。本当に虐待の事実を知らなかったのか、「再婚」を前に見ようとしなかったのか。

DVはなおる続