天皇即位の「恩赦」に「いらない」の大合唱……「良きことと信じる」弁護士の真意とは?
「恩赦」に関し、「天皇陛下のご即位は、日本にとって間違いなく慶事です。私自身は、この国家的・国民的行事をお祝いするという意味の一つとしては、『恩赦』は良きことと信じております」と言う山岸氏。
そもそも「恩赦」とは、どのような目的のもと生まれたものなのだろうか。
「『恩赦』の歴史は古くは、かつては時の政権や支配層などの権力者に代替わりが発生した際、思想や信条の違いなどで、政権や権力者が定めていた刑罰の根拠が失われたような場合に、後から『その罪はなかったことにしよう』といった考えから生まれたとされています。要するに、社会の変化により刑罰に対する考え方が変わったから、その時に罰せられた人々を救済しよう……というものなのです。一方で、『国に良いことがあった場合に恩恵を与えよう』という国家政策的なものとして行われているという面もあり、現代では、この考え方が主立っています」
今回の「恩赦」では、「政令恩赦」の対象を、罰金刑の確定から3年が経過した人の資格制限を回復する「復権」に限定すると報じられているが、山岸氏はその詳細を、次のように解説する。
「罰金刑を受けた人が、もう一度、罰金以上の刑(懲役や死刑など)を受けずに5年が経過した場合、『刑の言い渡しの効力』がなくなります。『前科』が消えるわけではありませんが、例えば医師が罰金刑を受けることによって欠格事由に該当した場合、罰金刑の確定から5年が経過すると、再び医師になることができるようになり、これを『復権』と言います。今回、『罰金刑を受けてから3年経った人を復権する』という『恩赦』を行うとのことで、これはつまり5年待たなければならなかったところが3年となるわけです」
「恩赦は国民に与えられた権利ではない」
世間では「恩赦」に対して「いらない」という声が目立っているが、山岸氏は、「『恩赦』はあくまで、『権力者』側のイニシアティブによるもの」とし、次のように見解を述べる。
「『恩赦』という制度は、国民に与えられた『権利』として存在しているわけではありません。そのため、受け手である国民が、この制度について良い悪いを評価するものではないと思います」
ネット上では、特に「選挙違反で停止された公民権の回復」に関して、「天皇の政治利用」「許されない」と声を上げる者が少なくないが、これについても山岸氏は「もともと国家政策的なものであり、 時の政権が維持されているのであれば、 国民がとやかく言うものではないと思います。『ふるさと納税』制度で、ある市町村が用意した『返礼品』に対し、『この返礼品は気にくわない』『もっと良い返礼品を用意しろ』と言ったところで意味がないのと同じことなのではないでしょうか」と語る。
しかし、時事通信が9月に実施した世論調査では、恩赦に「反対」とする人が54.2%、「賛成」の20.5%を大きく上回ったという結果も出ている。今後、廃止になる可能性はあるのかという点については、「廃止するかどうかは、『恩赦はいらない』という国民の声が世論となり、国政選挙の争点となって、国会で審議され、初めて議論されます」という。
「恩赦」に対するさまざまな意見が飛び交う中、「時代に合った制度のあり方」についても、考えていく必要があるのではないだろうか。