知られざる女子刑務所ライフ75

元女囚が考える元受刑者の就職――受刑者等専用求人誌『Chance!!』のすごいところ

2019/10/06 16:00
中野瑠美

ロクデナシは、どこにでもいてます

 たとえば『Chance!!』に求人広告を出している北洋建設(札幌市)の小澤輝真社長のインタビューによると、元受刑者を雇っても、8〜9割が辞めるそうです。建設会社は相当キツいですからね。でも、社長は難病の持病も抱えながら、お父さんの代から元受刑者の雇用を続けられています。

 ほかにも元受刑者を雇っている企業はありますが、どうしても飛ぶ(逃げる)人は多いです。経験から言わせていただきますと、元受刑者が仕事先から飛んでまうのは、寂しいからやと思います。

 そもそも小さい頃に親に愛されて育ってない人がほとんどで、愛され方も愛し方もわからないんです。自分が受け入れられないと思うと、すぐに投げ出してしまうんですね。本当はそんな自分がイヤで変わりたいのに、すぐには変われない。そこはわかってあげてほしいですが、向き合う人は大変です。

 確かに元受刑者はロクデナシが多いです。男は粗暴やし、女子はがんばろうと思ってもダメ男にコロッとだまされて、またムショに逆戻りとか。昔の自分もそうでしたけどね。

 でも、最近のニュースを見て、どうですか? 覚醒剤をやって逮捕されたのはエリートのお役人、チカンや盗撮はおまわりさん、集団レイプは有名大学生と、「暴力団員」や「不良」はあんまり目立たないです。つまりロクデナシは「元受刑者」や「元不良」に限らないのです。


 元受刑者たちを雇う時には「すぐ飛ぶのとちがうか」とか「また事件を起こすのとちがうか」と最初から決めつけず、「ダメ元」的な感じで受け入れてもらえたらと思います。できれば政府や関係機関で再就職のための研修とかも大々的にやっていただけたらいいですね。それこそお辞儀の仕方から電話応対まで、やさしくゼロからお願いします。

 そして、何度も書いてますが、ほんまに必要なのは、「元受刑者本人の自覚」です。これがいちばん難しいですが、私もがんばれているから、ほかの人もがんばってほしいです。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」

※この連載が本になりました!
女子刑務所ライフ!』(イースト・プレス)発売中です。

最終更新:2019/10/19 11:20
女子刑務所ライフ!
だめんずはなかなかやめられない