殺人、わいせつ行為、薬物所持……海外でトラブルを起こした大物セレブたち
1980年代に一世を風靡したイギリスのバンド「カルチャー・クラブ」において、“妖艶な女装ボーカリスト”として人気を博したボーイ。彼が05年10月7日、ニューヨークのマンハッタンで逮捕された事件は、奇妙な物語として語り継がれている。
マンハッタンにマンションを持つ彼は、同日午前3時過ぎ、「マンションに泥棒が入った!」と緊急通報した。しかし、ボーイは駆けつけた警察官に「どうしたの?」と笑顔で対応。警察官は、ふらついているボーイに不信感を抱きつつ、念のために室内を調べたところ、泥棒ではなく13袋に小分けされたコカインを発見。ボーイはその場で規制薬物所持容疑で逮捕された。
翌日、正常な状態になってから行われた罪状認否に、ボーイは憔悴しきった顔で出席。「コカインは自分のものではないし、どうして自宅にあったのかもわからない」と主張した。
その後、薬物依存症のリハビリ治療を受けることなどを条件に保釈。ボーイは薬物については引き続き「自分のものではない」と主張し続け、06年3月に「警察にうその通報をした」と虚偽通報罪を認めた。これにより規制薬物所持容疑の罪は取り下げられ、5日間の社会奉仕活動と罰金1,000ドル(約10万6,000円)の判決を受けた。また、裁判費用の160ドル(約1万7,000円)も支払った。
裁判後、ほっとした表情を見せていたボーイだったが、この2年後、本国イギリスの自宅に、ゲイ専門出会い系サイトで知り合ったノルウェー人男性を手錠を使って監禁し、鎖で殴打したとして逮捕された。
ジョージ・マイケル
3年前のクリスマスに、53歳の生涯を閉じたイギリス人シンガーソングライターのジョージ・マイケル。長らく同性愛者疑惑がかけられていたが、それが真実だと判明したのは、1998年4月7日の逮捕劇だった。
ジョージは同日夕方、ビバリーヒルズの高級住宅街に隣接するウィル・ロジャース記念公園のトイレで、私服警察官に勃起したイチモツを見せつけ、「公共の場で卑猥な行為をした罪」で現行犯逮捕。タブロイドの格好の餌食となった。なお、このトイレでは事件前からわいせつな行為が行われているようだと近隣住民から通報があったため、警察官が見張っていたという。
マイケルは身分を明かし、拘束3時間後には500ドル(約5万3,000円)の保釈金を支払って自由の身となった。裁判では「公共の場で卑猥な行為をした罪」について不抗争の答弁(有罪だとは認めないが、検察側の主張には反論しないという答弁)の申し立てを行い、80時間の社会奉仕活動と罰金810ドル(約8万5,000円)などの判決を受けた。
逮捕後、マイケルは米「CNN」のインタビューで「もう10年近く、女性とは体の関係を持っていない。恋人関係になるのは男性だ」とカミングアウト。その後、MTVのインタビューで「覆面警察官のほうがペニスを出すそぶりをしたから、誘っているんだと思って(イチモツを)出したんだ。そしたら逮捕されたんだよ」と、おとり捜査だったことを示唆。「ハンサムで長身で、グッド・ルッキングでデリシャスなアメリカの警察官に誘われたから、オレも出しちゃったんだよ」ともあっけらかんと語った上、この逮捕劇を歌とMVにした「Outside」まで制作、大ヒットさせた。
その後、逮捕した覆面警察官から「精神的苦痛を被った」と慰謝料1,000万ドル(約10億5,000万円)を求められる訴訟へと発展。この訴えは取り下げられたが、マイケルは一切のダメージを受けず、「カミングアウトして大成功した有名人」の先駆け的存在となった。
シド・ヴィシャス
海外で壮絶な事件を起こして逮捕されたセレブといえば、イギリスの伝説的パンクバンド「セックス・ピストルズ」のベーシスト、シド・ヴィシャスは外せないだろう。
1978年1月にバンドが実質的な解散を迎えてから、シドは恋人のナンシー・スパンゲンとニューヨークのチェルシーホテルに滞在し、薬物漬けの日々を送っていた。同年10月12日、ナンシーはその部屋のバスルームで、腹部に深い刺し傷を負った状態で死亡しているところを発見される。ナンシーが刺された時間帯、シドは睡眠薬の過剰摂取で昏睡状態だったが、凶器となったナイフはシドのものだったため、殺人容疑で逮捕された。ナイフは指紋が拭き取られた状態で発見されるなど不審な点が多かったが、警察は物的証拠があるとしてシドを逮捕した。
シドは所属していた「ヴァージン・レコード」に保釈金2万5,000ドル(約265万円)を払ってもらい、自由の身に。手首を切って自殺を試みるが、未遂に終わり、79年に入ってからは歌手パティ・スミスの弟をビール瓶で殴って暴行罪で逮捕されるなど、トラブルを起こし続けた。そして2月2日、ナンシー殺しの汚名を晴らすことなく、ヘロインの過剰摂取により死亡した。まだ21歳だった。