女のための有名人深読み週報

吉本興業騒動で口をつぐむオンナ芸人たち――いま再び山崎ケイの「ちょうどいいブス」を考える

2019/07/25 21:00
仁科友里
相席スタート公式プロフィールより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「普段、人から褒められていないのかな」相席スタート・山崎ケイ
『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系、7月13日) 

 吉本興業のブラック体質ぶりについて、有名無名含めた多くのオトコ芸人たちが抗議の声を上げている。しかし、オンナ芸人で正面切って会社の在り方に文句を言っているのが、友近とハリセンボン・近藤春菜の二人しかいないというのは、吉本興業の体質を表しているのかもしれない。吉本興業の顔はオトコ芸人であり、オンナは添え物。だから、オンナ芸人が口をつぐんだままでいるしかないと思うのは、考えすぎだろうか。

 吉本興業内の力関係において、「オトコ芸人>オンナ芸人」という暗黙の了解があるとすると、相席スタート・山崎ケイの「モテない美人よりモテるブス」を目指すためのメソッド「ちょうどいいブス」が、非常に理にかなったものに感じられる。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「たいこ持ち芸人」の回で、たむらけんじが「芸を磨くより、先輩に可愛がられた方が早く売れる」と話していたことがあったが、「ちょうどいいブス」はオトコ芸人の懐に入るのにもってこいのキャラクターだと思うからだ。

 「ちょうどいいブス」とは「酔ったらいける(抱ける)女性」のことを指すそうだ。オトコ芸人から見れば、「ちょうどいいブス」を自称する女性は「いじってもOK」かつ「いじらしい」かつ「都合がいい」存在で、可愛いだろう。キャラとしても新しいので、バラエティー番組に出る際の武器にもなる。山崎のエッセイ『ちょうどいいブスのススメ』(主婦の友社)は重版がかかり、テレビドラマ化され、本人も大ブレーク……するはずだったが、ミソがついた。


 #MeToo運動以降、一般の女性たちもSNSでこれまで我慢してきたセクハラを語っていいと気づいた。ゆえに、自分からブスという侮蔑を受け入れ、「酔ったらいける」オンナになりたがる山崎と、それをドラマ化しようとしたテレビ局には、放送前から非難が殺到。ドラマはタイトル変更を余儀なくされた。 

 原作者である山崎も、もちろん叩かれた。山崎が過去、痴漢について「満員電車に乗って、無事に目的地に着いたら、そういう努力(注:痴漢をしない努力)をしてくれた男性がいたのかなって思ってみよう」とツイートした“前科”もあったことから、「痴漢をしないのは当たり前のこと」「なぜそこまでオトコにおもねるのか」という批判も噴出した。

やっぱり、ちょうどいいブスのススメ