日本の避妊は「途上国」以下――ガーナ人女性が激怒した現実【早乙女智子×福田和子対談】
――海外の避妊事情はどうなんでしょうか?
福田 上の表は、カナダ・バンクーバーで開催されたWomen Deliver 2019 Conferenceで無料配布された、避妊の種類をまとめたシートです。日本で選べる避妊法は、コンドームとピル、IUDやIUSくらい。でも、海外だとパッチや注射、インプラントなどさまざまな種類があるんです。
早乙女 海外の場合は、かかりつけ医や若者が気軽に相談できるユースクリニック(※25歳以下なら、避妊、セックスの話や人間関係の悩みまでプライバシーも守られながら専門家に相談できるクリニック)も充実しているから、医師と相談しながら自分に合った避妊法を選択できるんです。オランダではピルを飲んだことのある人が80~90%だし、アメリカには校内にアフターピルの自動販売機を置いている大学もあるとか、ピルや中絶費用が無料の国も多いです。
福田 学校の保健室でピルがもらえたり、緊急避妊薬のアフターピルを薬局で売っている国もたくさんありますよね。スウェーデンでは、効果が3~5年持続するIUSが3,000円ほどで、出産経験がない女性も使っています。韓国はアフターピルに処方箋が必要ですが、それでも3,000円くらいと聞きました。日本だと診察が必要な上に金額は1~3万円前後しますし、低用量ピルを飲む場合だって検査料や初診料が必要なので、初診だけで1万円は用意して行くぐらいかかります。その後は薬代だけで毎月2~3,000円くらいを払い続けることになりますが、そんな話は日本以外で聞いたことないですよ!
――日本は避妊具の選択肢が少ないうえ、女性側への負担も大きいんですね。
早乙女 すごくトリッキーなんだけど、日本ではピル自体も避妊用と治療用に分かれていて、避妊用は自費なんです。でも、治療用は「避妊用ではありません」という体をとっているから、中身は同じなのに保険が適用されるんですよ。IUSも、過多月経などの治療目的であれば年齢に関係なく入れられて、保険適用で1万円以下なのに、避妊のためだと自費で5万円以上。しかも、主に経産婦が対象なので使用できる人が制限されています。つまり、それくらい日本では避妊に対するアクセスのハードルが高いんです。
福田 そういうところもスティグマを生んでいますよね。日本は治療費の多くを保険でカバーできる国ですが、適用外なのは美容整形や予防医療などの個人が選択する“アディショナル”なもの。そこに避妊が含まれていることで、「自分の好み」でやるものというイメージになってしまう。重要な医療とか、当たり前の医療として捉えられていないんだと思います。