サイゾーウーマンカルチャーインタビュー山内マリコ×笹井都和古が語る、地方と消費 カルチャー インタビュー対談【後編】 ネットのおかげで「ここには何もない」感覚が薄れる――山内マリコ×笹井都和古が語る、地方と消費 2019/07/13 18:00 番田アミ インタビュー 『県民には買うものがある』(新潮社) 作家・山内マリコさん(38)と笹井都和古さん(25)が考える「地方と東京」に迫った前編。後編はさらに、笹井さんの著書『県民には買うものがある』(新潮社)で重要なテーマとして描かれる「SNS」や「消費活動」について語り合った。 物を手に入れても“乾いている”ネット通販 ――笹井さんの著書『県民には買うものがある』(新潮社)で描かれる世界は、SNSやネットと密接につながっているのも印象的です。ネットで県外の情報が簡単に得られるようになったことは、“県民”に何らかの変化をもたらしましたか? 笹井都和古さん(以下、笹井) 私の下の世代は特にそうだと思います。よくインスタグラムで女子高生のプリクラを見るんですけど、どこに住んでいる子かわからないんです。みんな一緒で、同じものを持っているから。ネットで見たものをすぐに買える、ネット通販ができるのは大きいですね。だから「ここには何もない」という感覚はないかな。でも、ネットで買うのってなんか違いますよね。 山内マリコさん(以下、山内) 東京にいてもネットで服買っちゃうけど、なんか違うよなあと思う。 笹井 魅力が半減するというか……。小学5年生の時、家族旅行で東京に行って渋谷の109-2で買い物をしたんですが、その時「私はイケてる!」ってすごく思ってました。学校ではイケてる感じじゃないけど、東京で買い物をすることにより、「私は今、イケてる!」って。同じ洋服は滋賀県でも買えるけど、東京で買ったものって特別だと思いましたね。そういう輝きが、ネット通販にはないのかも。 ――“物を手に入れる=満足”ではないんですね。 笹井 家で物を受け取ったときは満足してるけど、実際に東京へ行くと、全然違うなあと。わかった気になっていたってことに、東京へ行くまで気づけなかったです。今の中高生は、代引きでネット通販できるのが当たり前だから、そもそも東京に行きたい気持ちが薄い気がします。インスタグラムで見て「この店に行きたい」と思うことはあるかもしれないけど、似たような店は地方にもあるし。大阪の都心部に引っ越してから近所のカフェに行くと、平日なのにものすごい混んでるんですよ。こういうところには、都会の不便さを感じましたね。 山内 都会こそ、ネットで買い物しないと生活が回らない。田舎はスーパーとドラッグストア、ショッピングモールを回ればだいたい必要なものが揃うけど、都会は「あれってどこに売ってるんだろう?」って迷子になる。ホームセンターは都心にないし。田舎の方がその点すごく便利だし、物欲を満たしてくれるおしゃれな郊外の店も増えたけど、やっぱり車で大型店舗を回って用事を済ませる生活には、情緒的な物足りなさを感じてしまう。うーん……。 笹井 実家にいるとき、「ZOZOTOWN」のダンボールがえらいことになったことがありました。“買う体験”ってなんなんでしょう。ネットで買うとバーチャル的で、手元にあってもバーチャルに感じます。店で買う感覚とまったく違う。ネット通販は“乾いている”感じがします。 山内 でも、ユニクロで両手がふさがるほど大量買いしたときも、乾いてない? 笹井 確かに。絶対に必要なものを買ったときは乾いていますね。 山内 潤いになり得る買い物って、無駄なものを買ったときなのかもね。無駄は人生の宝……。 次のページ 「今、Twitterのアカウント10個くらい持ってます」 123次のページ 楽天 県民には買うものがある 関連記事 ギャルもサブカルも“田舎”へ吸収される――山内マリコ×笹井都和古対談「地方出身女の生き方」“東京”と自分の距離感――長谷川町蔵×山内マリコが話す「東京女子の生きざま」田舎の幸せは「結婚」――東京に生きる女の子と地方の幸せのゴール「東京は希望」「東京には何もない」山内マリコ×中條寿子の女子と地方楽しい買い物で社会貢献 途上国や震災の被災地で生まれる高品質商品のショップ3選