サイゾーウーマンコラム歌舞伎町の人魚伝説事件 コラム 【連載】ホス狂いのオンナたち 歌舞伎町の人魚伝説事件――ホストのラストイベントから、消えた「女」と「1000万円」 2019/06/22 19:00 せりな コラムホス狂いのオンナたち 1000万円のシャンパンタワーと消えたミク だが、ミクは違った。一般論が長くなってしまった。取り急ぎ、この物語を語りきってしまおう。 彼女は、数カ月後に開催される担当のラストイベントに、1000万円を使うのだ、と私に豪語していた。そのために今はお金を貯めている、とも。勘違いしてはならない。ミクはエースだったので、もちろん毎月100万円以上を使いながら軍資金を貯めていた。とんでもない努力である。 これには、ある理由があった。ミクは「ホストを辞めた後は、担当と同棲する予定」とうれしそうに話していた。当時、ミクと担当ホストは“週に数日はお泊まりする仲”だった。「ラストのお給料は今後の同棲資金になる」「風俗も辞めて、二人で昼間の仕事をする」。7年間も一途にお金を使い続ければ、そんな夢のようなこともあるのか。当時はそう感心したのを覚えている。 あのときのミクより年上になった今の私であれば、「普通の恋人同士になるのに、最後にホストクラブでそんなに使う必要があるのだろうか」とも思うかもしれな……いや、やめておこう。100人のホス狂いがいれば100の事情がある。野暮な話はしない。 その後しばらく、ミクはお金を貯めるために連日連夜働いていた。私自身、彼女と会う機会は減っていた。 次にミクの名前を聞いたのは、件のラストイベントが終わった後のことである。情報提供者は、知り合いの、これまたホストからだった。歌舞伎町は狭い。ミクは、大量の諭吉様が詰まった小さなキャリーケースを持って、ラストイベントに現れた。そういえば、「銀行には入れられないから、キャリーケースに貯金している」と、ミクは私に写真を見せてくれたことがある。 キャリーケースには両手を体の後ろへ隠して微笑む、ピンク色の某ウサギキャラクターが描かれていた。きっとそのキャリーケースだろう。キャラクター自体は愛らしいが、想像してみると、なかなかにエグみのある絵である。 余談だが、歌舞伎町のホス狂いたちは、なぜかこのキャラクターを愛好する者が多かった。今でこそ少なくなったが、数年前まではこのピンクウサギがホス狂いの目印のようになっていた。歌舞伎町で石を投げればウサギにあたる。冗談でもなく、そんなトレンドだった。 1000万円のシャンパンタワー。ホストとして、有終の美を飾るにふさわしい、さぞかし立派なものだったことだろう。そして最後の営業時間も終わりに近づき、いざお会計となったときだ。 ミクは姿を消していた。 ミクの座っていた卓にはピンクのキャリーケースだけが置いてあり、中身は空っぽだった。キャリーケースの中身が一瞬で消失するというトリックであろうか。もしや、そのなかから、ミクがマジシャンさながら大脱出を決める……。しかし、残念ながら、そんなことはなかった。ミクも金も、きれいさっぱり消えてしまっていたのである。1000万円相当のシャンパンタワーは履行されている。担当は有終の美を飾るラスト・イベントで、1000万円の借金を背負うこととなった。 こういったことが起きないよう、超高額のお会計は、事前に半分程度を入金するのが普通だ。しかし、ミクは7年もの間担当を支え続け、実際にお金も貯めていた。その強固な信頼関係で、事前の入金は行われなかったのだろう。ホスト生活最後の日に多大な借金を背負う羽目になった担当ホストの話は、少しの間ホスト界隈を騒がせたという。 次のページ なぜ最後の夜に復讐したのか? 前のページ1234次のページ Yahoo マイメロディ ジッパーキャリーケース フレーム柄 前ポケット付き ピンク・SR694PN-2 関連記事 ホストクラブ「300万円偽札事件」勃発――歌舞伎町を震撼させた“未解決事件”に思うことホストで「一晩1000万円」使った女――担当も驚いた「紙袋に詰まった万札」の出所とは?テレビが取り上げない「毎日ホストに通う女」の実態……シャンパンコールの裏にある光景ホストにハマる女は「まじめ」になる。引きこもり風俗嬢が出会った「ホスト・コミュニティ」ホストに月200万円使う女は、どんな接客を受けるのか? 究極の接客「本営」の実態