田房永子・音咲椿対談【後編】

「モンスター母」と「男性中心社会」は無関係じゃない――毒親被害と“男女差”を考える【田房永子×音咲椿対談】

2019/06/26 15:00
安楽由紀子

デリカシーのない人は「境界線」がない

『婚約破棄で訴えてやる!』音咲椿/ウーコミ!

田房 それも、長男次男でよくある話だよね。

音咲 でも、弟が留守のときには、お義母さんが部屋を家捜しして「大人のオモチャがあった! 相手の女との写真もある」とNに告げ口するんですね。しかもその話が私にまで来る。

田房 デリカシーがない人は、境界線がないんだよね。たとえばセクハラする人も、自分の世界しか見ていないから、自分が言いたいことを言って、相手がどう思うか考えるという感覚がない。

音咲 母親って、子どもがいくつになっても家捜しするものなんですか?

田房 うちの場合は、小2と2歳だから、私はまだあまりそういう活動はしてないです。隠してたら見たくなっちゃうのかも。もう少し大きくなっても、安全面の問題で親が管理しなければならないこともあるけれど、子どもの前で「これ何?」と言うのはマナー違反だと思う。私、友達の手紙を母が勝手に読んでて、エッチな話を冗談で書いてたら「なんなの!?」ってテンパられて、つらかった。


 想像なんですけど、たとえば子どもが思春期になってエロに関するものを隠していたとしますよね。それを見つけたとき、私が自分の性の感覚を覚えていないとパニックになるかもしれない。でも、自分も中高生のとき、エロいことに興味があったと思い出すことができれば、別に大したことじゃないと気付ける。常に自分の性や思春期の感覚を覚えておいたほうがいいかなと思ってます。

『母がしんどい』(田房永子・KADOKAWA/中経出版)29ページより引用

田房 基本的に、親子が対等であることは100%ない。子どもにとって、親はものすごい権力者で脅威の存在。仲が良くても支配者。そこを親自身がわかっていないと、息子がイケメン(大人の男)になったら、あっという間に取り込まれると思う。お義母さんは加害者だけど、お義母さんもなにか誰かの懐に入りたい、胎内に入りたいという思いはあったと思うよ。

音咲 そうそう。お義母さんは、仕事を続けたかったのにお義父さんと結婚したら仕事を辞めさせられて、お義父さんには愛人がいて、子どもだったNに「私はあいつに裏切られた」「あんな汚い男!」と言っていて……。私は、田房さんが新刊で書いていた一文を読んで、お義母さんが許せそうになったんです。

――「私は男性の欲望を目にしすぎてしまったのかもしれない(中略)その自分の傷を自覚し、被害者である自分を自分で認めることをやりきるのがまず、私にとっては『男の子を育てるため』に必要なことだと思った」
(『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』より引用/大和書房)

音咲 「お義母さんは『男に傷つけられた』んだよ、お互い様でしたね」と言ってあげたい。結局、誰が一番悪いかというと、お義父さんだと思うんです。


田房 そうなんだよ。毒母問題は、「家父長制の男性中心社会の問題」なんだよ。