カルチャー
田房永子・音咲椿対談【後編】

「モンスター母」と「男性中心社会」は無関係じゃない――毒親被害と“男女差”を考える【田房永子×音咲椿対談】

2019/06/26 15:00
安楽由紀子

 過干渉な実母のもとを飛び出し、現在は2人の子を育てている田房永子さん。毒親の母を持つ元彼から、一方的に婚約を破棄された経験を『私の彼が毒親から逃れられない!~婚約破棄で訴えてやる・番外編~』(サイゾーウーマン)で描いている音咲椿さん。なぜ、音咲さんの元彼は毒親から逃げられなかったのか。毒親はなぜ、毒親になってしまったのか。田房さんが2歳の男の子を育てている母親の目線で分析する。

■前編はこちら……「毒親被害と「男女差」を考える――彼が切り裂きたかったのは“へその緒”だった

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音咲椿さん(以下、音咲) 毒親から離れられないのは、男女差はありますか? 田房さんはお母さんから逃げたじゃないですか。なぜ男は逃げないんだろうと疑問に思っているんです。田房さんの『うちの母ってヘンですか?』(秋田書店)に、田房さんと生育環境がソックリの男性が「なんだかんだで母はボクを愛してるんで、田房さんとちがって」といったことを語っているのが印象的でした。

『うちの母ってヘンですか?』(田房永子・秋田書店)42ページより引用

田房永子さん(以下、田房) そもそも私の“毒親漫画”は、男性の読者は少ないんですよ。女性は「うちの母親もこうなんです」と話してくれて、私が「それはヤバイですね!」と返したり笑ったりすると、「そうですよね! やっぱヤバいですよね! 話してよかった!」と明るく帰っていく人が多いです。一方、男性の場合は深刻な感じなんです。めちゃくちゃヤバいエピソードを話してくるから私が「それはヤバいですね!」って言うと、逆に暗くなっちゃう。「田房さんは親に愛されていないけど、僕は愛されてはいるんです」と反論されたり。ちょっと違うんだなって思います。

 女性は30代を超えたあたりで、だんだん「お母さんって、私が小学校のときにこんなふうだったんだな」と肌感覚でわかるんですよね。一番大きいのは、性的なこと。「お母さん、この年でスケベなことを考えてたんだな」とか。女性は30代になったらこんなもんだと、母親たちの愚行、女性のどうしようもなさが、許す許さないは別として同じ人間としてわかる。だから、女性のほうがカラッと「うちのお母さん、超ヤバいっすよね」と言えるようになる。一方、男性はずっと「女性は性欲がないんじゃないか」とか、母親に対してちょっと“女神感”を抱いてる感じ。それはファンタジーだと頭ではわかってても、肌ではわからない。そういうことが影響してるのでは?

音咲 なるほど、そうかもしれない……。不思議なのは、実家には弟も同居してたんですが、弟はNを見ているからか、取り込まれないんです。お義母さんも弟には強く出られないんですよ。

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