コラム
【連載】ホス狂いのオンナたち

ホストにハマる女は「まじめ」になる。引きこもり風俗嬢が出会った「ホスト・コミュニティ」

2019/04/13 17:00
せりな

 また余談が長くなってしまった。速やかにユカの話に戻ろう。ユカがホストクラブの扉を再び叩いたきっかけは、ざっくり2つだ。一つは、会社でうまくやっていけなくなったこと。もう一つは、彼氏と別れたこと。付き合っているはずが、相手はセフレだと思っていたそうだ。よくある認識の齟齬である。しかし、全てのいさかいはどうってことない行き違いから勃発するものであると、私たちは歴史から学んでいる。

 ともあれ、ユカはしばらく家から出られなくなったそうだ。しばらくの戦略的撤退として会社を辞めた後、彼女は風俗で働き始め、ホストクラブに通うようになった。ユカは、きっちりと週に6日、昼の12時から夜9時頃まで働き、その後はホストクラブへ足を運ぶ。自ら定めた休日は、ホストクラブの定休日と同じだった。

 ホストクラブには、ルーティンがある。たいていのホストクラブは毎週の定休日が決まっている。その定休日の前日、月に2回は、なんらかのイベントがある。誰それの誕生日やら、幹部昇格祭やら、その名目はさまざまだ。夏になれば浴衣営業の日があり、クリスマスや正月には還元と銘打って、ビンゴ大会が催されたりする。ホストクラブには四季があるのだ(ちなみに今の我が家のテレビは2年前にホストクラブのビンゴ大会で当たったものだ。現役大活躍中である)。そして、イベントが終われば月末の締め日、月が変わって月初に、前月の売り掛け(ツケ)の入金日がある。

 何が言いたいか。つまり、こういうことである。ホストクラブは極めて強固なルーティンでもって回転している。そして、このホストクラブのルーティンに沿って、ホス狂いの生活のリズムが決まっていくのだ。

 ユカは、風俗で働き始めた当初、半ば引きこもり状態で、月に何度かお金が必要なときだけ風俗に出勤していたという。冒頭の「いつ死んでもおかしくなかった」というフレーズは、このときのユカの心情だったそうだ。しかし前述の通り、私が知り合ったときのユカは、ホストクラブへ行くことを生活の軸として、規則正しく生活し、働いていた。OLのときと、同じように。学生のときと、同じように。

 こう書くと、驚く読者もいるだろう。むしろ、ホストクラブのメインカスタマーである風俗嬢たちは、だらしない人種だと思っているかもしれない。自己管理能力のなさ故に、毎朝起きて決まった時間に出社することができない。だからこそ、風俗で働かざるを得なかった、と。

 そのイメージは、半分正解で、半分間違っている。いや、確かに実際問題、風俗の世界に飛び込む人間にはそういうタイプが多いのは事実だ。私だってそうだ。決まった時間に起きられない。毎日繰り返し同じことができない。忘れ物や失くしものは日常茶飯事だ。

 しかし、ホストクラブに行くことで、風俗嬢たちのだらしなさは大幅に改善される。なぜなら、先ほど説明したホストの強固なマンスリールーティンに突入するからだ。毎月のイベントによってスケジュールを組む。入金日に向けて、労働力をうまく調整する。今月は厳しそうだから、多めに「残業」しておくかなんて思ったりする。

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