仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

立川志らく、友井雄亮の純烈脱退へのコメントに見る“時代遅れ”の価値観と自意識

2019/01/17 21:00
立川志らく公式サイトより

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「例えば、事務員。DVの人が事務員やっていいの?」立川志らく
(立川志らく公式Twitter、1月14日)

 噺家とその一族の自意識が、理解できないことがある。

 例えば、『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)に、林家三平が出演した時、こんなエピソードを明かしていた。三平が女性と交際するときは、母親である海老名香葉子、長姉の海老名美どりと、その夫である峰竜太、次姉の泰葉が面接をし、許可を得る必要があるという。特に母親の意見は絶対で、お眼鏡に叶えば“うな重”が出てくるが、気に入らなければ、交際禁止を示す“カレーうどんが出てくるらしい。ちなみにほとんどの女性がカレーうどんで、珍しくうな重が出たのは、元日本テレビの馬場典子アナウンサーだったそうだ。

 「母親が怖い」という意味で、このエピソードを披露したのかもしれないが、私が感じたのは海老名家の“何様感”なのである。『ボクらの時代』(フジテレビ系)で、三平の兄・林家正蔵が、妻について「短大生の頃からうちに出入りしていて、おふくろが『お勤めしないでうちに来てほしい』と頼んだ」と言っていた。つまり、結婚は香葉子の意向が強かったことを明かしている。ということは、香葉子が三平の彼女に対して面接をするのは、結婚に向けての最初の面接である可能性が高いだろう。まぁ、噺家という伝統芸能の家の一員となるのだから、サラリーマン家庭とは違うと言いたいのかもしれないが、「相手の女性が自分の息子と結婚したがっている(息子がフラれる可能性はない)」と思い込んでいるのがすごいと思うのだ。


 噺家、もしくは自分の家は、人に憧れられている。香葉子は、そんな自意識を持っているように私は感じるが、この人もまた同じ系統なのではないかと思うのが、立川志らくだ。

 『ひるおび!』(TBS系)のコメンテーターとなって以来、テレビに出演する回数が増え、ニホンモニターの「2017年上半期のブレイクタレント部門」1位に輝いた。志らくは伝説の落語家・立川談志の弟子にあたるわけだが、コメントする際「談志がよくこう言っていたんですよ」というエピソードを披露する。破天荒でならした談志だけに、どんなエピソードかと期待が高まるが、よく聞いてみると“自分褒め”だったということが、ちょくちょくあるのだ。

 例えば、番組名は失念したが、談志は映画や音楽、浪曲などに造詣が深く、幅広い知識を持っていたという話を、志らくが披露していたことがあった。私のように談志を知らない人なら、「へぇ、そうなんだ」と新しい情報として受け止めるが、ここで志らくは「立川流の弟子の中で、談志の好きなものを全部マスターしたのは、自分だけ」と結ぶのだ。あれ、それ、結局、自分が勤勉だって褒めてます? と思ってしまう。

 『梅沢富美男のズバッと聞きます!』(フジテレビ系)に出演した志らくは、11年に談志が亡くなり、テレビで特集が組まれるなどしたことで、その偉大さをあらためて知り、「私がもっとテレビで売れていたら、どれだけ喜んだことだろう」と悔やんだことが、テレビ進出のきっかけだったと説明していた。

 師匠思いの話に水を差してなんだが、師匠である談志から、今際の別れに「テレビに出ろ」と言われて、テレビ進出を決め、人気者になったのなら、日本人が大好きな人情話になるだろう。けれど、別に直接言われたわけでもないのにテレビに出たのなら、それは単に本人の希望ではないだろうか。談志のキャリアは、弟子が売れようと売れまいと損なわれるわけではないし、師匠を喜ばすという言い方も、自意識過剰というか上から目線だと私は感じてしまう。


志らくの言いたい放題 (PHP文庫)