ミスター慶應&東大候補者の性犯罪報道、「熱狂する世間」の欲望を精神科医が読む
さらに片田氏は、渡辺容疑者に関して、「衝動制御障害」の可能性もあると見ているそうだ。
「週刊誌で、渡辺容疑者と肉体関係を結んだ女性が彼について、『性行為を拒むと首を思いっきり絞めてくる』『頭をバリカンで刈ろうとする』などと証言しています。また、今回逮捕された事件でも、女性に性的暴行を加えた後、場所を移動して、腹を蹴るなどしたと報じられており、性衝動や攻撃衝動をコントロールできないのではないかと感じますね。だから、衝動制御障害の可能性が高いのですが、その原因は、生まれつきの性格と環境の相互作用です。本来であれば、子どもの頃からのしつけや教育によってだんだん矯正されていくはずですが、渡辺容疑者の場合はどうだったのでしょうか。彼の祖父は建築関係の仕事で財をなしたやり手の経営者だったものの、口癖は『一番欲しいものは学歴』『孫たちを難関校に進学させるのが願い』と伝えた週刊誌記事がありました。こういった記事を読む限り、家庭内に“勉強さえできればいい”という雰囲気があり、渡辺容疑者が自分の思い通りにならないことがあって問題を起こした際、周囲が咎めなかったのかもしれません」
そんな渡辺容疑者の祖父は、「文春」の取材に対して「最低五年間は刑務所で“治療”してほしい(中略)あれは病気なんだ」と述べているが、片田氏は「厳しいことを言ってしまうかもしれない」と断った上で、「刑務所に入っても治らないのでは」と見解を述べる。
「なぜなら渡辺容疑者は、犯行内容から見て、情性欠如者である可能性が高いからです。情性欠如者とは、罪悪感や良心の呵責、同情心、反省する気持ちなどが一切ない人のことを指します。渡辺容疑者はかつて、親友の彼女を寝取ったこともあると伝えられており、倫理的に禁じられた行為を犯すことに快感を覚えていたフシがあります。これもまた情性欠如者と私が考える一因です。刑務所で更生できるかというと、難しいのではないでしょうか」
一方で、稲井被告には、衝動制御障害や情性欠如者の特徴は、報道内容を見る限りでは、見当たらないようだ。実家は神奈川県で歯科医院を開業しており、父親は有名国立大卒と報じられている。自身も、超エリート校である駒場東邦高校を卒業し、一浪ののち東大に合格。大学入学当初は「地味で口下手」「根暗」で、キャリア官僚を目指すサークルに所属していたと友人が証言する週刊誌報道もあった。
「開業医の家庭で、“勉強ができなければいけない”という価値観の中で育ってきたのではないかと思いますね。東大で多くの優秀な人たちに出会って挫折を味わい、その傷ついた自己愛を、チャラさで補強しようとしたのではないかと思うのですが、渡辺容疑者に比べると、まだ更生できる可能性はある気がします」