ミスター慶應&東大候補者の性犯罪報道、「熱狂する世間」の欲望を精神科医が読む
片田氏はまず、稲井被告と渡辺容疑者について、「自分は特別な人間である」と思っていた可能性を指摘する。
「2人は、『高学歴』『容姿』『裕福』という三要素によって、特権意識を抱いていたように思います。本来であれば、女性に対する性的暴行は許されない、けれど“自分は特別な人間だから許される”というふうに考えていたのではないでしょうか。それから、女性を“性欲を満たすための道具”としてしか見ていないとも感じましたね」
こういった特権意識を肥大させたのは、「本人だけでなく、周囲の影響もある。頭がいいから、顔がいいから、家がお金持ちだからと、周囲が容認してきたのでは」という。確かに「週刊文春」(文藝春秋)では、渡辺容疑者の祖父が同誌の取材に応じ、孫である彼について、高校を2カ月で退学になったことや、スイスに留学したものの女性問題を起こして追い出され、ニュージーランドに渡ったことを明かしており、これまで家族が示談金を払ってトラブルを解決してきた可能性も考えられる。そういった状況で、女性をモノ扱いし、性的暴行も許されると思い込んでしまったのではないかと、片田氏は考察を広げる。
「『高学歴』『容姿』『裕福』のどれか1つではなく、3つ“揃った”ことが、特権意識をかなり助長したのでしょう。しかし、『容姿』と『裕福』は、彼ら自身の努力によって得られたものではありません。『高学歴』だって、生まれ持った頭脳と努力だけでなく、多額の教育投資により手に入れられた面もあります。本人はそのことに気づかず、『高学歴』『容姿』『裕福』を全て自分の力で手に入れたと思い込み、“自己愛”を強める要素にしたのではないでしょうか。2人は、“自分は特別な人間である”という特権意識に支えられた強い自己愛を持つ『自己愛性パーソナリティ障害』だと思われます」
しかし、そんな2人だが、全てが完璧だったわけではない。2人はともに留年しており、大学内では“劣等生”だったようだ。
「自己愛性パーソナリティ障害の人は、自己愛が傷つきそうになると、現実から目を背け、別の面で自己愛を補強しようとします。ですから、この2人がミスターコンテストに出場したのも、稲井被告が『日本一チャラい東大生』を自称してインターネット番組などに出演したのも、学内で落ちこぼれて傷ついた自己愛を、“有名になること”“モテること”“経験人数の多さ”といった別の面で補強するためと考えられます」