【連載】別れた夫にわが子を会わせる?

昭和40年代、DV・モラハラという言葉がなかった時代の「夫からの恫喝と暴力」の悲劇

2018/11/07 15:00

夫の嫉妬や疑念がひどくなり、家を出る

――具体的には、どういった目に遭われたのですか?

 いつも、主人の目を気にしていなきゃいけないんです。例えば、隣の家のご主人と話しているのを主人に見られたら、「あの男とデキてるんじゃないか」って一方的に疑われるんです。食堂で男性のお客さんにお茶を出しただけで嫉妬されましたし、家にかかってくる電話を取っても疑われました。浮気のドロドロを描いている昼のメロドラマをテレビで見てると、「お前もドラマみたいに浮気をしたいんだろう」って疑われる始末です。

 そしてしまいには、夫婦の間に娘2人を挟んで寝ていただけで疑われました。

「寝てる途中、ほかの男が忍び込んできて、その男といいことしてるんじゃないか。見つけたらただじゃおかねー」

 そう言って彼は、枕元に木刀を置いて寝るようになりました。


――猜疑心っていうのはすごいですね。

 そうやって何年か過ぎていったんですが、日々疑われているうちに、私も精神状態がおかしくなってきました。近くに住んでいたきょうだいに主人のことを手紙で伝えていたんですけど、「手紙の文面が変だ」って、言われたんです。たぶん私も精神的に追い込まれてたんでしょうね。夫婦で回していた食堂も、お客さんにお茶は出せないし、電話に出ることもできない。隣の人とも話せない。それで私、あるとき意を決して主人のきょうだいを家に呼んで、相談に乗ってもらいました。ところが主人は激高して、包丁を持って暴れだしたんです。話にならないので、結局、私の自分のきょうだいに守られるようにして家を出ました。

――とうとう包丁が出てきたんですか。身の危険を感じますね。

 その後も浮気をずっと疑われてて、恫喝されたり、モノを投げられたりしました。そうしたことが続いたので、私は別居することにしました。それは今から42年前のことです。

後編へつづく


最終更新:2018/11/10 11:41
わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち
言葉はなくても、DVやモラハラは昔からあった