「母親の学歴は子の学力に影響する」説は本当? 「勉強嫌いで短大卒」の母を持つ中学受験生は今
もう1人、別の事例をご紹介しよう。栄子さんの最終学歴は短大。「女に学歴は要らない」という父親を、母親が「せめて短大だけでも」と説得して行かせてもらった経緯があるそうだ。
栄子さんはニコニコ笑いながら、「それを言うと、頭が良い子だったのに、四大に行かせてもらえなかった娘のように思うかもしれませんが、全然です。勉強、好きじゃなかったんで……(笑)」と話すが、ただ、栄子さんは少女時代から本が大好きで、あらゆるジャンルの本を乱読してきたそうだ。結婚後に住まいを決める時も「大きな公営図書館が近くにあること」が条件になったという。
結果、本がたくさんある環境の中で育った娘の琴美ちゃんも、幼い頃から本が好きで、本を与えておけば、夢中になって読んでいる子だったそうだ。
栄子さんはこう証言する。
「小さな頃の琴美は、草花の図鑑が特にお気に入りで、2人で実際に図鑑を持ちながら、“探検隊”を結成し、自宅周辺の野山を観察して歩きましたね。懐かしい、良い思い出です」
現在、琴美ちゃんは優秀なリケジョを輩出することで有名な、ある女子校の中学生に成長。将来の夢は「植物学者か獣医」なのだそうだ。
このように、必ずしも「学歴が高い母に育てられなくては、学力が高い子にはなれない」ということではない。ただし、よく言われる「子は親の背中を見て育つ」という言葉に通ずるように、筆者が「この子は本当の意味で賢いな」と思える生徒さんの背景には、必ず賢い母親がいるように感じている。
それを強引に一言でまとめるならば、こういうことだと思う。
「学びの面白さを知っている母の子は伸びる」
勉強は大人になってからでも遅くはない。今日からでも、学ぶことの面白さを知るチャンスはたくさんある。学歴うんぬんではなく、まずは母自身が何かにトライしてみることが、結果として、子どもの“やる気スイッチ”を押す、一助になるかもしれない。
(鳥居りんこ)