“中学受験”に見る親と子の姿

「母親の学歴は子の学力に影響する」説は本当? 「勉強嫌いで短大卒」の母を持つ中学受験生は今

2018/10/28 19:00

超難関校合格の息子を持つ“中退の母”

 シングルマザーである安代さんも、そのケースに当たる。彼女は高校時代に、父親が事業で失敗してしまったために、やむなく中高一貫校を中退。大学進学を諦め、働き出したという。20歳そこそこで結婚・出産をしたものの、夫とは性格の不一致で離婚。そこから、一人息子の蒼汰君を1人で懸命に育ててきたそうだ。

 そんな安代さんは、蒼汰君を中高一貫校に入れるべく、奮闘し始める。筆者の「自分の成し遂げられなかった夢のリベンジという意味合いもあったのか?」という意地の悪い問いかけに、彼女は笑いながら、こう答えた。

「確かに、それがまったくないわけではないです(笑)。でも、それより、蒼汰には良質な環境の中で、いろんな『これは、何だろう?』に出会い、考えることを大事にしてほしかったんです」

 蒼汰君は現在、超難関の中高一貫校の高校生だが、母である安代さんに対して、どう思っているのだろうか。

「母は、『いつ寝てるんだろう?』って思う暮らしをずっと続けています。僕の中学受験時代は、母も僕が勉強している横でずっと勉強していたんですよ。『蒼汰が合格を目指して頑張っているんだから、ママは公認会計士になる!』って言って、真剣にやってましたね。働いて、家事もして、それで僕の面倒もみての中ですからね……」


 筆者の心に響いたのは蒼汰君のこの言葉だ。

「母の言葉で印象に残っているものですか? 『蒼汰、勉強できるって贅沢で、楽しいものね』です」

 これは、大学進学を諦めざるを得なかった安代さんだからこその言葉だろう。公認会計士はさすがに難関試験なので、安代さんは現在、夜間の専門学校に通って猛勉強中。蒼汰君は医師を目指して受験勉強中とのことなので、親子の机を並べた自宅学習はまだ継続中とのことだ。

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