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日本では知名度すら低いけど……アメリカで面白いと大ヒットしているドラマ5選

2018/10/13 19:00

■ 『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』(2017年4月~)

 女性の不妊率が異常に高く、妊娠したとしても健常児を出産できる確率が大幅に減少した、環境汚染にまみれた近未来。アメリカは、「今こそ聖書の教えに従うべき。そうすればすべてが正常に戻る」と訴えるキリスト教原理主義団体に乗っ取られ、ギレアド共和国になる。「女性は家のことだけをしていればよい」という考えのギレアド共和国は、女性の権利、財産、生活、名前すべてを剥奪。“使えそうな女”は捕らえて、“使えそうにない女”はその場で殺害。抵抗や逃亡しようとした者は処刑し、遺体は見せしめに吊るされるような地獄へと化してしまった。

 出産経験のある女性や妊娠可能な女性は家族と引き離され、訓練センターで「侍女(ハンドメイド)」になるための拷問・洗脳を受ける。聖書の創世記で「ヤコブの不妊の妻ラケルに代わり、女奴隷のビルハが子どもを産んだ」という部分を都合よく解釈し、ビルハにあたる侍女を、子どもができない政府高官の家に派遣するためだ。侍女は、排卵時期に「神聖な儀式」を行う。抵抗できないよう夫人に両手を押さえられ、高官に強姦されるのである。

 物語の主人公は、キャリアウーマンのジューンだった侍女。白人女性だが黒人の夫を持ち、一人娘を育てていた彼女は、自分の置かれている状況に悲観し、何度もくじけそうになる。だが、一緒に捕らえられ離れ離れになった娘を救い出してこの国を出ようと歯を食いしばり、さまざまな行動を起こす。侍女が互いを監視するというシステムで、誰が味方で誰が敵なのかわからない中、ジューンは着実に前へと進んでいく。

 原作は1985年に出版された、カナダ人作家マーガレット・アトウッドの小説。レーガン大統領が人工妊娠中絶の禁止を公約していたことから、極端に保守的なキリスト教原理主義にアメリカが支配されたらどうなるかを描いたという。同じく保守派であるトランプ大統領が政権をとったから、本作品は「フィクションとして見ていられないほどリアル」だと話題に。ギレアド共和国の成立前後を描いたフラッシュバックシーンは、「今起きてもおかしくない」と、多くの人を夢中にさせた。動画配信サイト「Hulu」が手がけていることから、規制なく、原作に忠実に、リアルに描くことができたと業界からも高く評価された。


このドラマの最大の見どころはずばり「ウーマンズ・パワー」。なにもかも奪われていると思いきや、女性たちははどこまでも強くしたたかであることが、見事なまでに描かれている。監督、脚本チーム、衣装デザイナーなど、女性が中心となっており、細部までリアリティが感じられる。ジューン役を演じるエリザベス・モスは『マッドメン』でブレイクした実力派女優。アレクシス・ブレデルや、イヴォンヌ・ストラホフスキー、アン・ダウドら、個性派女優たちの演技も光っている。

■『ザ・ミドル ~中流家庭のフツーの幸せ』(2009年9月~18年5月)

 

 インディアナ州のオーソンという架空のど田舎に住む、プア・ホワイトを絵に描いたようなヘック家。収入の少ないヘック夫婦は常に支払いに追われる生活をしているが、「どうにかなるだろう」というポジティブな精神の持ち主。地頭は良いが、だらしなく勉強嫌いなハイティーンの長男――素直でやる気に満ちあふれているものの、空振りばかりしているドジな長女――読書大好きで頭が良いが、とても変わっており、人間関係を築くのが苦手な次男は、貧乏にめげることなく、親譲りなポジティブ・シンキングだ。

 ヘック家が住む一軒家は修理が必要な箇所がたくさんあり、物であふれている。広い庭は草がボーボー。自家用車はあるものの、年季が入って錆びておりボロボロ。着ている服も、ディスカウントストアで売っているようなものばかり。すべてが古臭く、チープでボロボロなのだが、お金がなくても一家は幸せを見つけ出し、「家族がいて幸せ」と満足している。


 “なにもないへんぴな場所”という意味の言葉「in the middle of nowhere」にちなんでタイトルがつけられた同作は、ファミリードラマを得意とする米ABC局で9シーズンにわたり放送された。見どころは、アメリカの田舎者の日常をコミカルに描いたところで、プア・ホワイトが抱える深刻な問題にズバズバと触れている点だろう。共感する人もいれば、「自分はここまでひどくなくてよかった」と思う人もいる、アメリカ人にとってわかりやすいストーリーで、過激な描写がなく、安心して見られるという点も受けた。

 一家の母親役を演じたパトリシア・ヒートンは、これまた日本ではあまり人気が出なかった『HEY!レイモンド』(96~05)でブレイクした女優。彼女のコミカルな演技も、ドラマを大ヒットに導いた要因のひとつだといえよう。賞などは取らなかったため「評価されなさすぎ」という声も多かったが、内容が内容なだけに仕方ないと思っているファンも多い。なお、ドラマはすでに終了しているが、長女を主人公にしたスピンオフが制作されることになっている。

最終更新:2018/10/13 19:00
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