サイゾーウーマン芸能テレビドラマレビュー瀬戸康史『透明なゆりかご』 芸能 ドラマレビュー 瀬戸康史、『透明なゆりかご』由比院長で完成した『あさが来た』以降の男性像 2018/09/24 21:00 ドラマレビュー 『透明なゆりかご』公式サイトより 金曜夜10時から放送されている『透明なゆりかご』(NHK)は、沖田×華(ばっか)の漫画『透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記』(講談社)を原作とする医療ドラマだ。 物語の舞台は由比産婦人科という小さな医院。看護師見習いの青田アオイ(清原果耶)は、この医院でさまざまな事情を抱えた女性と出会う。9話では、アオイと仲良くしていた10歳の女の子が何者かに性的暴行を受け、この医院を訪れる場面が描かれた。 つらい話が多いが、見せ方は実に淡々としている。だからこそ緊張感が凄まじく、毎回圧倒される。これは脚本家の安達奈緒子の筆力によるところが大きいだろう。『リッチマン、プアウーマン』や『失恋ショコラティエ』(ともにフジテレビ系)といった月9ドラマを多く手がけている安達は、働くとはどういうことか? 母親になるとはどういうことか? といった問題意識を強く打ち出す脚本家だ。月9の華やかなドラマで執筆する際には、その生真面目な作家性が違和感となって印象に残っていたが、NHK地上波の本作では、原作漫画との相性の良さもあってか、安達の作風が良い方向に作用している。 何より素晴らしいのが、出産に対する距離感だ。第2回の「母性ってなに」というタイトルが象徴的なのだが、産婦人科を舞台にした医療ドラマでは、どうしても母性と出産の美化が行われがちだ。もちろん、本作でも出産シーンは感動的だが、中絶をすることになった女性にも丁寧に寄り添い、彼女たちを裁かないようにしている。そんな作品のスタンスを象徴しているのが、瀬戸康史が演じる由比産婦人科の院長・由比朋寛だ。 由比は、以前は大きな病院に勤めていたが、患者に時間を掛けすぎるため大病院には合わず、一人ひとりを丁寧に診ることができる医院を開業した。第8回で由比は、妊娠してノイローゼ気味になっている妻の気持ちがわからないという男性に対して、以下のように言う。 「僕も産科医ですが、妊娠した女性の体の中で起きていることは医療的にはわかっても、気持ちはわかりません。それが無性に悔しく思うこともあります」 「でも、わからない分、わかりたいって思う気持ちは強いです。女性の医師が女だからわかるって流してるところも、僕は勉強して経験を積んで、わかろうとします」 冷静に物事を見つめる由比院長の包容力があるからこそ、つらい場面が続いても、安心して本作を見ることができるのだ。 それにしても、由比を演じる瀬戸康史を見ていると、こんなに頼りがいのある俳優に成長したのかと驚かされる。 次のページ 一見頼りないが、包容力のある男性という共通像 12次のページ Amazon 透明なゆりかご(7) (KC KISS) 関連記事 『おっさんずラブ』、ドラマ史に残る失恋シーンを演じた吉田鋼太郎の演技力『ブラックペアン』嵐・二宮和也に拍手喝采、イラつかせる“チンピラ演技”の魅力とは『アンナチュラル』井浦新が、星野源・高橋一生に続く“アラフォー人気俳優”となる理由志尊淳、『トドメの接吻』『女子的生活』で証明した“実力派若手俳優”の力量『BG』俳優・木村拓哉が、中年男性の“弱さ”を演じられないいくつかの理由