【連載】庶民派ブランドの落とし穴

フォーエバー21が抱える“3つの地雷”! 「2点目タダ」の激安商法が裏目に出たワケ

2018/09/06 20:30

フォーエバー21の苦戦は「低品質」だけじゃない

 フォーエバー21は、H&Mよりも低価格、またヤング向けトレンドのブランドとして知られています。商品企画のスピードも速く、まさしくファストファッションの代表だといえます。ただし、商品の品質が低いので、この点も“ファストファッションらしい”のではないでしょうか。

 3年くらい前から国内市場であまり注目されなくなった理由は、急成長したジーユーと、その他国内低価格ブランドに、客を奪われたからだと考えられます。値段は同じくらいでも、品質の低さに定評のあるフォーエバー21と比べると、国内ブランドの方が品質は高いだけに、客を奪われるのは必然なのかもしれません。ちなみに、現在、日本で苦戦を強いられているH&Mも、同様の問題を抱えていると思われます。

 そのほかにも、現在フォーエバー21が抱えている弱点はたくさんありますが、中でも特に大きな弱点を3つ挙げてみましょう。

1.店舗数が少なすぎ! 消費者にとってはチェーン店じゃない?

 フォーエバー21の展開店舗数は全国でわずかに16店舗しかありません(18年8月現在、公式サイトより)。ピーク時でも25店舗ほどしかなく、展開店舗数ではZARA、H&Mとは比べ物にならないほどで、そこからさらに閉店が続き、今に至ります。ちなみに、ニュースで取り上げられた原宿店の閉店時点では17店舗だったので、それ以降にまた1店舗閉店していることになります。

 国内ブランドで見てみると、ユニクロの800店舗、しまむらの1,400店舗、ジーユーの300店舗にははるかに及びません。そもそもこの規模では、消費者に“チェーン店”として認識されることは不可能。せいぜい、“大都市都心部にしかない舶来ブランド”と認識されるのがオチでしょう。本国のアメリカではそれなりの大手ブランドなのですから、もっと最初に資本を投下して多店舗戦略を採るべきだったのです。それだけ、米国本社は日本市場を軽視していたと考えられます。


2.「2点目無料」で不良在庫だらけのイメージに!?

 消費者視点でも如実に透けて見えるのが“過剰在庫”です。フォーエバー21は他ブランドとはまったく異なる販売手法を採っており、それが「指定セール品2点目無料」というもの。これはどういうことかというと、店内で指定されたセール品は2点目が無料になり、早い話が、1枚分の値段で2枚買えるわけです。例えば3,200円の商品が半額の1,600円に値下がりしていたとすると、1,600円の値段で2枚買えるので、1枚当たりの値段は800円になってしまいます。

 国内のさまざまなブランドで「2点目半額」という売り方はすでに存在しています。青山や、はるやまなどのスーツ販売大手は「2点目半額」をやっていますし、ライトオンやジーンズメイト、マックハウスも「ジーンズ2本目半額」という売り方をときどきします。しかし、国内の衣料品売り場で「2点目無料」をやっているのはフォーエバー21しか、当方は見たことがありません。逆にいえば「タダで持って帰ってほしいほど在庫がある」ということになります。

 アパレルが不良在庫を処分する方法はいくつかあります。自社バーゲンで投げ売りして、それでも残った場合、最もオーソドックスな方法が、アウトレット店で販売することです。現在は、SPA(製造小売り)形態のブランドが業界では主流なのですが、その場合、自社でアウトレット店を所有しているブランドがほとんど(ユニクロ、ジーユー、しまむらは持っていませんが)。アウトレット以外だと、「バッタ屋」と呼ばれる在庫処分業者に安値で売るという方法もあります。1枚何円という売り方ではなく、段ボール箱何箱で何円というような売り方になることが多く、洋服1枚当たりの引き取り値はだいたい100~500円程度。バッタ屋はこれをさまざまな安売り屋に転売したり、自社の店舗で、安値で販売したりして、日々の生計を立てています。余談ですが、「日本一長い」といわれる大阪の天神橋筋商店街には、何軒ものバッタ屋の店舗が軒を連ねています。

 このどちらの手段も取りたくないブランドは、廃棄処分にします。ただし、廃棄処分にした場合は、産業廃棄物として処理業者に渡すため、処分料をブランド側が払わねばなりません。わざわざお金を払って在庫を捨てているので、非効率なやり方だともいえるでしょう。

 フォーエバー21の場合は、このいずれも選択せずに、自店内で「指定したセール品」を「2点目無料」という形で、消費者にタダで配布しています。もちろん、「タダで配っている」と消費者間で話題になりますから、ブランド価値を大きく毀損することになります。それほどに不良在庫を抱えているといえますし、消費者も「売れてないブランド」と認識してしまうのではないでしょうか。


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