他局ドラマにまで出演する名物刑事、ゲストは大物スターばかり……『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』のトリビア
米「NBC」局で今年9月からシーズン20が放送され、アメリカの最長寿プライムタイムドラマの仲間入りをした『LAW & ORDER:性犯罪特捜班 (以下、LAW & ORDER:SVU)』。シーズン20まで放送された作品は、1950年~70年代に大ヒットした西部劇『ガンスモーク』と、90年~2010年まで放送された『LAW & ORDER』の2作のみで、『LAW & ORDER:SVU』は後者のスピンオフ作品だ。
『LAW & ORDER』シリーズの基本フォーマットは、「冒頭で事件が発生。犯人を追いつめて逮捕した刑事から、被害者のために法廷で闘う検事へとバトンタッチする」というスタイルだ。性犯罪事件を扱うニューヨーク市警察のエリート刑事たちを描いた『LAW & ORDER:SVU』は、際どい事件ばかり描かれていることや、メインキャラクターである女刑事オリビア・ベンソンの活躍/出世が痛快だと人気を集め、爆発的なヒットとなっている。今回は、放送20年目に投入してもなお魅力が色褪せない、『LAW & ORDER:SVU』の「あまり知られていない秘話」を紹介しよう。
1)ドラマの仮タイトルは『セックス・クライム』だった
『LAW & ORDER』シリーズ製作総指揮者のディック・ウルフは、1986年に実際に起きた「進学校に通っていたロバート・チェンバースが、18歳の美女ジェニファー・レヴィンを強姦した上で殺害した」事件がきっかけで『LAW & ORDER』のスピンオフを作ろうと考えた。
これは「“被害女性はセックスに積極的だった”というマスコミの偏見報道により、あり得ないほど軽い判決になった」と今なお議論を呼ぶ問題多き事件。『LAW & ORDER』でもこの事件を下敷きにしたエピソードを制作したが、ディックはこのような強姦殺人事件のみを取り上げるドラマの制作、そしてそのタイトルを『セックス・クライム』にすると決心した。
しかし、放送局の「NBC」は規制の多い地上波であるため、視聴者や広告に大金を払ってくれているクライアントから「セックスなんて際どい単語を使うな!」と批判されることを懸念。変更を打診されたディックは、『LAW & ORDER』のブランド名と、ニューヨーク市警に実在する「性犯罪特捜班」をくっつけたタイトルにすることにした。ディックは後に、「幅広い性犯罪を描きたいと思っていたので、性犯罪特捜班の方がタイトルとして適切だと思ったしね」とも説明している。
2)ナレーションを担当しているのは元政治家
ドラマの冒頭に流れる「In the Criminal justice system~」で始まるナレーション(日本語訳すると「刑事司法制度では、性犯罪を特に重罪と見なす。ニューヨークには、この悪しき犯罪と闘うエリート集団がいる。性犯罪特捜班の刑事たちだ」というセリフ)を担当しているのは、スティーヴン・ザーンキルトン。共和党員で、メイン州下院議員を8年間勤め上げた元政治家だ。
スティーヴンは本家『LAW & ORDER』シーズン1第1話に端役として採用されたのだが、彼の渋みのある声に、製作総指揮者のディックが感動。彼の声をオープニング・ナレーションとして使うことを即決し、スピオンオフ作品のオープニング・ナレーションも彼に依頼した。
『LAW & ORDER』シリーズの象徴ともなっている彼の声だが、米「TNT」局で再放送された際には、予告コマーシャルに登場。ファンを大喜びさせた。