“中学受験”に見る親と子の姿

模試結果を塾のトイレで隠滅……中学受験「最上位クラス」の女子を悩ませた“褒める母親”の正体

2018/08/25 17:00

 自分も“受験生”になった、中学受験生の母

 さくらちゃん親子のケースとは、反対の事例も紹介しよう。真面目に学習していたものの、6年生の前半まではパッとしない成績だったという奈々ちゃんとそのお母さんのケースだ。お母さんは、成績がどれだけ伸び悩んでいても、いつも奈々ちゃんにこう伝えていたそうだ。

「今まで知らなかったことが、わかるようになっていくのって楽しいわね」

 お母さんは多忙な身ながら、奈々ちゃんが受験で頑張るならば、自分も資格試験に挑戦すると言い出し、自らも受験生となって、奈々ちゃんと一緒にダイニングテーブルで受験勉強をするようになったという。

 そして、奈々ちゃんに対し、決まって「今日はどんなことを勉強したの? ママに教えて」と言い、奈々ちゃんから「算数のこの問題が解けた!」と教えてもらうと、その解き方を丁寧に見て、「すごいじゃない! ママには難しい問題だけど、奈々ちゃんのおかげでよく解ったわ! ありがとう」という褒め方をしていたそうだ。

 奈々ちゃんは筆者にこう教えてくれた。


「母はどんなに忙しくても、私が『今、聞いてほしい!』って時には、必ず手を止めて、私の話を真剣に聞いてくれるんです。受験勉強に関してだと、私が自分なりにこういう解き方をしてみた! って時には、本当に心から『すごいじゃない! よく思い付いたわね』って褒めてくれていました」

 奈々ちゃんは、こうしたお母さんの反応がとてもうれしく、「今日は塾から帰ったら、お母さんにこの問題を教えてあげよう!」というモチベーションで勉強に励めるようになったそうだ。

 奈々ちゃんはこの影響もあってか、6年生の後半で成績が急上昇していき、結果、現在、理系に強いといわれる難関中高一貫女子校に通学している。

 さくらちゃんのお母さんと奈々ちゃんのお母さん、どちらも我が子を愛し、「褒める子育て」を実践してきた人であろう。しかし、親心では同じように「褒めた」ように見えるが、結果が違ってしまうことがあるように思えてならない。

 つまり、こういうことである。


「条件付きの愛は子どもを滅ぼす」

 「良い成績を取るから、うちの子はいい子」という「条件ありき」で我が子を褒めると、その条件を達成できないプレッシャーを感じた時、子は壊れやすいということだ。

 「褒める」という行為は、子どもの情緒にとって、とても良い効果を生むことは確かだと思うが、そのやり方次第で、明暗は分かれていくという事例をお伝えした。奈々ちゃんのお母さんのように、我が子に接することは、なかなかに難しいことではあるが、そのコツは「結果」ではなく「プロセス」にこそ「褒めポイント」を持っていくことなのかな? と筆者は思っている。
(鳥居りんこ)

最終更新:2019/08/14 17:51