りゅうちぇるは「夫婦間の育児分担問題」の活路となる? ぺことの子育てが社会に与える影響
――今、育児現場ではどのようなことが問題になっているのでしょうか。
藤田 『ワンオペ育児 わかってほしい休めない日常』の中でも書いていますが、産後も働く女性が増えている中で、日中は仕事をして帰宅後に家事と育児を母親が1人でこなす、という状況が見られます。夫に協力をしてほしいのに、夫は仕事が忙しくて帰宅が遅く、頼ることすらできない。まだまだ日本には「男性が多く稼いでくる」という考えが根強く残っているので、男性が育児をするための制度が会社にあっても十分利用できていません。実際に、私も明治大学の女子学生に話を聞くと、結婚相手の男性に求める条件には「稼ぎがいい」という項目が上位にくるんです。男性が「稼いでなんぼ」という考えは、若い世代にもまだまだ色濃く残っていて、女性の社会進出が叫ばれる一方で、母親が1人で仕事も家事も育児もしなければならない、という現状があります。
――2人で協力し合いながら、お互いを思いやり育児をしているぺこ&りゅうちぇるに共感している育児世代は多いと思います。
藤田 父親・母親という枠にとらわれることなく、自分たちで考えて、子育てに奮闘している様子が本当によく伝わってきます。産後、ぺこの母親がサポートにきてくれているようですし、頻繁に2人の友人もSNSに登場して、みんなで子育てを楽しみながらしているのもとても理想的ですね。いろんな人に触れながら育つことは、子どもにとっても社会性を学ぶ上で重要なことだと言えます。事実、母親が家庭にこもってワンオペで育児をするというのは、高度成長期でサラリーマンが増えた頃からの話。以前は親族が育児をすることも多く、おばあちゃんが育児の主導権を握っているなんてことも少なくなかったようです。現代でも、中国では、「育児は楽しいもの」という考えの元、祖父母が奪い合うように子どもの面倒を見ているなど、「母親がたった1人で育児をする」という日本の現状は、先進国の中では稀なんです。
――ここまでのお話を聞く限り、ぺこ&りゅうちぇる夫妻が若い世代だけでなく社会全体に与える影響は大きそうですね。
藤田 母親が1人で育児を抱え込んでしまっている実情を少しでもなくすために、ぜひ、ぺこ&りゅうちぇるには、さらに露出を増やして、育児のことを発信してほしいですね。
また、りゅうちぇるが、子育てを通して、ぺこを労ったり気遣っている姿も印象的です。本来、女性の役割と思われていた「情緒的なサポート」も、環境や訓練によって男性もできる、ということをりゅうちぇるはきちんと示してくれたと思います。恐らく、りゅうちぇる自身が他人を労ったり、相手の気持ちを考えるように育てられてきたのだと思います。外見が伝統的なジェンダーにとらわれないだけではなく、ふるまいも性別の「らしさ」をこえているところは、社会的な意味を提言してくれているのではないでしょうか。