『dele(ディーリー)』、“怪物化”する山田孝之を受容する菅田将暉の反射神経
菅田は器用な俳優だ。映画『帝一の國』のようなケレン味の強い漫画的なキャラクターもいけるが、平凡な役、例えば映画『銀魂』の志村新八のような薄味のキャラクターも演じられる。そういえば、俳優デビュー作となった特撮ヒーロードラマ『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)も『dele』のような探偵モノの体裁だったが、菅田が演じたのは、本作で山田が演じている坂上に近い、引きこもりの天才プログラマーだった。
役者の配役は過去作のイメージで起用されることが多いため、菅田が坂上を演じてもおかしくないものの、今回の菅田は明るくて優しい青年役だ。さまざまなキャラクターを演じるスタンスは、ともすれば器用貧乏な俳優として印象が薄くなってしまいがちで、主演を演じても脇役に回っても、菅田将暉として鮮烈な爪痕を残しているのは、すごいところだ。今の20代の俳優の中では人気も力量も頭一つ抜けていると言ってもいい。
一方の山田は、今の30代俳優の中では異質すぎてほかと較べようがない。特に10年代に入ってからは、今まで演じてきたイケメン俳優の枠から抜け出し、『闇金ウシジマくん』(TBS系)等の作品で強面の男を演じるかと思えば、ドキュメンタリードラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京系)で本人役として出演し、どんどん“怪物化”している。本作の坂上も、山田の怪演に目が行くが、そんな怪演を平気で打ち返す菅田の反射神経の方に驚かされる。
真柴が面白いのは、依頼人の遺族と関わる時、いつも正体を偽っていることだ。つまり、情報を探るために別人として振る舞う、「演技をしている演技」という二重の芝居をしている。何の迷いも持たずに別人と振る舞えてしまう真柴は、どこか不気味だ。また、友達がいないから自分の葬式なんか開きたくない、という坂上に、「奇遇だね。それ、俺もだわ」と返す真柴には、明るく見えても実は孤独で、坂上と似たもの同士なのだとわかる。
坂上と真柴の関係も複雑で、一見すると坂上が「陰」、真柴が「陽」という関係に見えるが、どうも一筋縄ではいかなそうだ。『傷だらけの天使』のような兄弟分にも見えるが、実はすごく対等で、反目しながらもお互い通じ合っているのだ。
ドラマの評価は、2人の関係を最終的にどう描くのかにかかってくるのだろうが、山田孝之と菅田将暉の演技の応酬を見るという、贅沢な時間を毎週味わうだけでも、今、見る価値のある作品である。
(成馬零一)