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インタビュー

アカチャンホンポ「お母さんを応援」パッケージ変更――「クレーマー批判」はなぜ起こる?

2018/07/30 21:30

 日経BP社記者を長年務め、企業取材の経験も豊富な治部氏は、赤ちゃん本舗側にとって、パッケージ変更を要求する人たちは「クレーマーではない」と断言する。

「企業が新製品を考えるときに大事なのが、消費者の本音。消費者にアンケートを実施しても、みんないい格好をしがちなので(笑)、本当は『高くて買えない』と思っていても、書かないなんてことはよくあります。だからこそ企業は、本音をほしがっているし、『キャッチコピーが嫌』というのは、ぜひ参考にしたいと思う意見なのでは。『Change.org』に掲載された署名活動の文章を読みましたが、とても丁寧に書かれており、これは本来ならば、企業が多額の予算をかけてマーケティングリサーチを行って得る情報。それを消費者自ら、無料で届けてくれたとあって、赤ちゃん本舗側からしたら、むしろとてもありがたい話でしょう」

 実は今から20年以上前、当時11歳だった英国王室のサセックス公爵ヘンリー王子夫人、メーガン・マークル氏が、P&Gの食器用洗剤のキャッチコピーに対して同様の要望を出し、変更になったことがあったという。

「『アメリカ中の女性が、鍋やフライパンのしつこい油汚れと戦っている』といったキャッチコピーだったのですが、メーガン氏はそれに同調する男子生徒に嫌な気持ちを抱き、父親に話をしたところ、『手紙を書いてみれば?』とアドバイスされたそうなんです。そして実際に彼女は、P&G 、また“影響力がありそうな人物”として、子ども番組のキャスター、当時の大統領夫人ヒラリー・クリントン氏に『「アメリカ中の女性」を「全てのアメリカ人」に変更すべき』といった手紙を送ったといいます。それだけがきっかけだったかはわかりませんが、実際にキャッチコピーは変更されました。P&Gは、近年、国際的な広告祭でジェンダー平等推進に関する賞を続けて受賞しています。20年以上前から、こうした消費者の声と向き合ってきたからこそ、世界で最も進んだセンスを持つ企業になっているのだと思います」

 赤ちゃん本舗のおしりふきは、キャッチコピーを“変更ではなく削除”して、パッケージ自体を変えるというものだったが、「『それでもやっぱり、育児の中心はお母さん』という日本の現状を踏まえた上での判断だったかもしれませんね。消費者は意見を言う、企業はそれをどこまで聞くかを判断する……これは一般的な、企業と消費者のコミュニケーションです。もちろん、要望する消費者側が、企業を罵ったりすれば“クレーマー”になりますけどね」。

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