「アルコール依存症」は女性のほうが発症しやすい! その社会的背景と対策を医師に聞いた
年々、患者数が増えているといわれるアルコール依存症。なかでも、特に女性の発症が急増しているという。そもそもアルコール依存症とはどのような病気なのか? なぜ女性の発症者数が増えているのか? その対策法、治療法などを、国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長の松本俊彦氏に聞いた。
■体調が悪くてもお酒を飲み続けてしまうアルコール依存症
アルコール依存症と一口に言っても、さまざまな類型があり、十把一絡げに定義するのは難しい。ただ、どのタイプでも共通しているのは「お酒を飲むことのデメリットがあまりにも明らかになっているにもかかわらず、お酒をやめることができない、もしくは控えることさえもできなくなっている状態」だと松本氏は言う。
「前の日にお酒を飲みすぎて体調が悪かったりすると、多くの人が『今日は飲むのをやめよう』と考えるものですが、それでもまた飲んでしまったり、1杯にしておこうと思っても、歯止めが利かずにとことん飲み続けてしまったりするのは、アルコール依存症の典型的な症状です」(松本氏、以下同)
また、二日酔いで体調がすぐれない状態を緩和させるために酒を飲む、いわゆる「迎え酒」も、アルコール依存症患者に多く見られる症状だという。
アルコール依存症の人は、体内のアルコール濃度が下がってくると、手や全身の震えや幻覚、発汗、不眠、吐き気などの離脱症状がみられるようになる。その不快感から逃れようと、さらに酒を飲み続けるという悪循環に陥ってしまうのだ。
■女性はアルコールの分解が男性より遅い
厚生労働省の調査によれば、アルコール依存症患者数は2003年の80万人から、13年には約109万人に増加している。
なかでも特に女性の患者が増えているという。その原因のひとつとして、女性のアルコール分解能力は遅いことが指摘されている。一般的に女性は男性と比べて体も肝臓も小さいのでアルコールの分解が遅い。さらに体脂肪が多く、体内の水分量が少ないために血中のアルコール濃度も高くなり、依存症に陥りやすい傾向があるという。たとえば、日本酒3〜4合の量を毎日飲んだとすると、男性で10年、女性では6年でアルコール依存症、もしくはアルコールによる深刻な内臓障害を呈するといわれている。
さらに松本氏によれば、女性の社会進出とともに、飲酒率が増加していることもその一因だと語る。
「最近の調査では、お酒を飲む若い男性が減っている一方、社会に出るようになった女性に習慣的な飲酒が増えているという統計結果があります。また、女性の場合、更年期が近づいてくると女性ホルモンの減少により、お酒をより多く飲める体質に変化するので、アルコール依存症になるリスクが高くなるのです」
そのほかに若い女性でも恋愛の失敗や一人暮らしなど、孤独を感じる環境をきっかけに、アルコール依存症になってしまう人もいる。年齢に関係なく、女性は特に注意が必要なのだ。