GU(ジーユー)が抱える3つの地雷! 「ガウチョパンツ100万本ヒット」以降、停滞するワケ
数多くある低価格カジュアルブランドの中、この10年間で最も売り上げ規模を拡大したのは、ファーストリテイリングが展開するGU(以下、ジーユー)でしょう。2006年にスタートしたジーユーは、2018年8月期の売上高が2000億円を超える見通しとなっています。12年間で売上高2000億円を突破することは、すごいと言わねばなりませんが、その一方で伸び率は鈍化してきています。単独で売上高2000億円を超えている国内ブランドはユニクロ、ファッションセンターしまむらなど、数えるほどしかないので、伸び率鈍化は巨大ブランドゆえの苦しみといえるでしょう。
今回は、そんな一躍巨大ブランドにまで成長したジーユーについて見ていこうと思います。
ジーユーが急成長できた最大の要因は、「低価格・高トレンド」対応ブランドへの転身に成功したからです。意外に思われるかもしれませんが、06年に鳴り物入りでデビューしたものの、しばらくは鳴かず飛ばずの状態が続いていました。理由は簡単です。ジーユーは「廉価版ユニクロ」としてスタートしたから。もともと定価でも安いユニクロに、さらにその廉価版を求める人はどれほどいるでしょうか。デザインはユニクロとほぼ同じ、しかし廉価版なので製造コストが抑えられているため、素材や縫製の品質は低いのですから、売れなくても当たり前でした。また、ユニクロは期間限定値下げや売れ行き不良でどんどん値下げしますから、わざわざ出来の悪い廉価版を買う必要もなく、値下げされた時点で買えば済む話。「廉価版ユニクロ」が成長できなかったことは当然といえるでしょう。
転機となったのは10年、ジーユーが、価格帯はそのままにトレンド対応ブランドへ変身したことです。これがヒットして、あっという間に、12年8月期には売上高500億円を突破し、13年度は837億円、14年度は1075億円と売上高を増やしました。たった2年でほぼ倍増ですから、すさまじい売れ行きだったといえます。
さらに、ジーユーの名前が世間に鳴り響いたのは15年夏のこと。当時トレンドだった「ガウチョパンツ」を販売2カ月で100万本販売という実績を築いたのです。アパレル業界では年々大ヒット商品が出にくくなってきているので、これには大いに驚かされました。近年、生まれた大ヒット商品というのは、ヒートテックやウルトラライトダウンといった、機能性がクローズアップされた商品ばかり(しまむらの「裏地あったかパンツ」も機能性商品)だっただけに、何の機能性も持たず、トレンドだけの切り口で100万本もの大ヒットがあったのは、本当に久しぶりといえるでしょう。ガウチョパンツの大ヒットを受けて、16年8月期は売上高1,878 億円(前期比 32.7%増)、営業利益が 222 億円(同 34.8%増)と大幅増収増益となりますが、ジーユーの急成長はここを最後にストップしてしまいます。