「プチ別居」で炎上の『あさイチ』、華丸・大吉のMC力以上に問題だった「坂下千里子のマイルール」
ちょっとした外出や規制を「別居」ということよりも、私が大きな違和感を覚えた点は2つあった。1つめは、8年ぶりに飲みに出た女性(以下、Aさん)は、なぜこれまで夫に「飲みに行きたい」と言い出せなかったのかという点。2つめは、夫とスケジュールを調整した上で、乳児の子ども2人を連れて実家に1週間程度帰省する女性(以下、Bさん)に対し、番組側が「甘えていると思われないために」といった言葉を使った点である。実家に甘えて何がいけないのか私には理解できないし、そもそも実家に帰省するかどうかは、Bさんと夫や両親の問題であり、他人には関係ない。AさんとBさんのケースからは、女性の“内なるブレーキ”に似た何かを感じずにいられない。それはゲストの坂下からも感じることができる。
ロンドンブーツ1号2号・田村淳の元カノで、モテ女として名を馳せた坂下だか、最近は使い勝手のいいママタレントになっている印象だ。『ノンストップ』(フジテレビ系)で「夫はカメラマン」「収入が月によって違う」と話していたことがあるが、夫がテレビの世界の裏方に属することは、ママタレとしての千里子に幅を与えている。夫が富豪ではないので、視聴者に嫉妬されないし、有名人や人気芸能人でもないため、テレビで夫の悪口を言っても夫やその関係者に迷惑をかけることもない。千里子は共感されながら、夫の不満を言える数少ないママタレなのである。
その千里子も飲みに行くときは、「1カ月以上前に夫に言う」「一次会だけで帰ってくる」「必ず夜ご飯を作っていく」と話した後、「好感度上がっちゃう」と言っていた。本人が自覚しているかどうかは別として、千里子の中には「飲みに行くお母さんは、褒められた存在ではない」というマイルールがあるのではないだろうか。大吉は「1カ月前から言わないでもいい」という見解を示したが、結局のところ、当人自身が「こうあらねばならない」というマイルールを抱え込んでいたら、周囲が何を言っても無駄である。
飲みに行って帰ってきたAさんの夫は、3人の子どもの面倒について「思ったより大変」とし、最後に「母は偉大なり」と結んだ。これは褒めているようだが、一種の責任転嫁ではないだろうか。母親は偉大だからなんでもできる、でも、自分は母親でないのでできないと甘える父親、そして、休んだり甘えたりすることがいけないというマイルールに縛られる母親。主婦ウケを狙った企画だったのだろうが、華丸・大吉のMCとしての力量以前に、夫婦問題の根があまりにも深いことが露呈した回だった。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
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