「私はブスなのではないか」容姿コンプレックスに苦しむ大人が増加、“終わらない思春期”問題
――姉妹間の容姿コンプレックスは、例えば姉の立場で言うと「私はブス・妹は可愛い」というケースを想定しがちなんですが、逆に「私はカワイイ・妹はブス」というのもまた、容姿に“執着している”という点では同じコンプレックスと捉えてよいのでしょうか?
茅野 同じです。“ありのままの自分”を自分で愛せないことから、人と比べて「私はカワイイ」と自分を作り続けてしまうわけです。それは自己陶酔などではなく、自分自身は無力で価値がなく、何の取り柄もない無意味な存在であるという“劣等感”があるからではないでしょうか。これは専門用語でいうと“自己愛性パーソナリティ障害”と言います。
「自分が自分であればよい、自分は自分以上でないし、自分以下でもない」という気持ちが持てることを目標にすべきですが、ただ、姉妹間の容姿コンプレックスは姉妹だけの問題ではなく、やはりご両親や周りの環境も多大に影響してくるので、「これを改善すればいい」と一言で言えないのが現状です。
――なかなか根深い問題ですね。
茅野 しかし、容姿コンプレックスにかぎらず、「コンプレックスは決して悪いものじゃない」ということを知っておいてほしいです。コンプレックスがあるからこそ、それを糧に頑張れたり、解消するために努力したり。例えばスポーツ選手では兄弟・姉妹で活躍されている方々も多いと思いますが、成長期に関していえば、早く生まれて体格・知能ともに発達している兄や姉の方が当然優位ではあるものの、弟や妹はその背中を追って成長していく。そして、兄や姉に負けまいと頑張ってきたらいつのまにかメダルが取れていた……などの逸話がたくさんありますよね。
――確かに、お笑い芸人の尼神インター・誠子さんも双子の妹に対して強い容姿コンプレックスを抱いていたそうですが、それが糧になりお笑い芸人を目指し、見事夢を叶えられましたよね。
茅野 そうですね。要は、“生かし方次第”ということです。コンプレックスを抱えるのは人として当たり前。ただその思いに呑み込まれないようにして、うまく付き合っていければいいですね。
(取材・文=ヨコシマリンコ)
茅野分(ちの・ぶん)
銀座泰明クリニック院長。群馬大学医学部卒業後、同大学付属病院、前橋赤十字病院、佐久総合病院にて、精神医療・身体医療、救急医療・地域医療等に従事。慶應義塾大学病院精神神経科で診療、社会精神医学の臨床・研究に取り組む。同大学大学院修了後、銀座泰明クリニックで診療。
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