医師インタビュー

流行の「はしか」、大人が重症化する理由とは? 女性がするべき予防法

2018/06/06 15:00
hashika_ninpu
特に妊婦は注意が必要

 ゴールデンウィーク前後から流行が騒がれている「はしか」。3月の沖縄での感染報告を中心に患者が急増したのち、現在は愛知県や東京都などで感染例が報告されている。はしかは、子どもに比べて大人のほうが重症化しやすいといわれ、特に妊娠中の発症は流産などのさまざまなリスクがあるという。そこで、大人の「はしか」が重症化しやすい理由や、その予防策などについて医師に聞いた。

■例年の5倍超え! 2018年に猛威をふるう「はしか」

 各地ではしかの感染報告が寄せられている今、なぜ全国的に流行しているのだろうか。

「今回の大流行のはじまりは、沖縄に来た台湾人旅行者でした。それを皮切りに、沖縄県内で感染が広まってしまった理由のひとつは、春休みと時期が重なった点にあります。はしかウイルスは、インフルエンザウイルスの約10倍の感染力があるので、最初の感染者が観光客として巡った先々で拡散していった可能性も高いです」

 そう話すのは、MYメディカルクリニック院長・笹倉渉氏。また、笹倉氏によれば、はしかの初期症状は風邪と酷似しているため、診断が遅れた可能性もあるという。


 先日、沖縄では新たな感染報告がなく終息に向かっているという発表があったが、ゴールデンウィーク前後に流行のピークを迎えた同県では、旅行のキャンセルが相次ぎ、多額の損害が出た。

「沖縄の場合、一極に人が集中する場所があまりなかったことが不幸中の幸いです。やはり、空気感染が広がりやすい環境は人混みなので、東京のように人がたくさん集まる場所や電車利用者が多い地域の場合は、さらに感染が広がる可能性があります」(同)

■39度以上の高熱で命の危険も

 国立感染症研究所の報告によれば、もっとも多く感染しているのは30〜39歳の32%、次いで20〜29歳で24%(2018年5月16日現在)。いわゆる成人層が多く発症していることがわかっている。北青山Dクリニック院長・阿保義久氏によると、大人のはしかは重症化しやすく、入院するケースも少なくないという。

「この年齢層の人がはしかに感染すると、10日前後で発熱や咳、鼻水など風邪に似た症状があり、その状態が2〜3日続いたのち38〜39度以上の高熱と発疹があらわれます。はしかの高熱による苦痛は命の危険を感じるほど重症化することがあり、そのうち40%ほどの患者が入院を余儀なくされます」


 高齢者など、免疫力が低下している場合は中耳炎や肺炎、脳炎に進展して1000人に1人が死に至るとても怖い病なのだ。また、妊娠中の女性は流産のリスクもあるため、さらに注意が必要になるという。

「妊娠中にかかると、流産や早産をきたす可能性があります。妊娠中は予防接種を受けることができないので、ワクチン接種を受けたことがなかったり、はしかにかかった経験がないという妊婦さんは、現在のような流行時には外出を控え、人混みを避けるようにしてください」(同)

 はしかは非常に感染力が強く、免疫がない場合は100%発症する、と阿保氏。感染者のくしゃみや咳で飛び散ったウイルスによって感染する飛沫感染や、空気中にあるはしかウイルスを吸い込んでの感染など、人から人へと難なく感染していくという。

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