「初めてのバー」で好かれる術、知りすぎてる! 愛嬌たっぷり「クズじいさん」の素性って?
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どうも、紫帆です。都内の某飲み屋街で小さなバーを経営している私が、夜毎の営業中に目撃したクソ客・変な客・珍事件について、お話させていただきますね。さて、今宵のお客さまは――
話題豊富な愛されじいさんの素性は……リアル前科者!?
第一印象は「一体どこのご隠居だろう?」。年の頃は70過ぎ。ハゲ頭に、痩せ衰えた体つきは完全におじいちゃんですが、眼鏡の奥のまなざしには経験豊富な大人の老獪さと好奇心が満ちています。トークの守備範囲はビジネスから映画、流行のアイドル、子ども向けのアニメまで多岐にわたり、語り口はひょうひょうとして愛嬌たっぷり。そして、何よりも気前の良さです。高級なジャパニーズウイスキーをボトルで入れ、バーテンダーや隣に座ったお客さまにお酒を振る舞ってニコニコ。お会計時にも実際の金額よりかなり多めに支払い、「釣りはチップにしろ」と言って去っていきます。
何者なんだと謎が深まる何回目かのご来店時、おじいちゃんは「公認会計士」と肩書がある名刺をくれました。業界内では有名な方なのかも……と思って検索してみたところ、「数年前に詐欺で逮捕」とのニュースがヒットしました。小金持ちの奥さまに、実体のないビジネスへの投資話を持ちかけて金銭をだまし取ったとのこと。後々有罪になって公認会計士の資格をはく奪されたらしく、彼を悪徳ニセ会計士として糾弾しているサイトまで出てきました。
リアル前科者キタ……!
検索結果を目で追っていて背中に冷たい汗が流れ落ちる心地がしましたが、少なくとも現時点ではお店で楽しく飲んでくださっているだけ。肩書を詐称するのも酒場ではしばしばあることで、それらしくいろんな肩書を名刺に連ねて実際は何の仕事をしているのか定かでない人や、飲みに来る時だけ指輪を外す既婚者などと大差ないのでは――わたしは、わたしと店が犯罪に巻き込まれない限りは程よい距離感を保って接客しようと決めたのでした。
案の定、おじいちゃんの羽振りのよさは来店のたびに鳴りを潜めていきます。高級ウイスキーが普通のウイスキーになり、いつのまにかボトルキープもやめてグラスワインになり……それでも仕事関係のお客さんらを連れて、足繁く通ってくれています。おしゃべりの内容も、徐々に「地方の実業家から金をまきあげる方法」「ハズレ馬券を金に換える方法」「水商売の女性を利用して稼ぐ方法」などクズ度の高いものになっていきましたが、それはそれで裏モノ雑誌を読んでいるような面白みが。時折、他のお客さまに怪しい儲け話を持ちかけるのには困りましたが、あまりにビッグビジネスすぎる(「レディ・ガガに新曲を書かせてジャニーズの○○くんを起用したCMの話があるからコピーを考えてくれ」等々)ため真に受ける人もおらず、「飲み屋にいるうさんくさいけど面白いおじいちゃん」として店に定着していったのです。