“中学受験”に見る親と子の姿

「こんな偏差値、本当に俺の子か?」中学受験生の母が、“無理解な夫”との離婚を決めたワケ

2018/05/27 17:00

 しかし、タケル君の成績は思うようには伸びてくれず、そこで、みどりさんはタケル君の家庭教師役も買って出て、深夜まで弱点科目の補強に勤しむ毎日だったという。

「私も契約社員とはいえ、フルタイムで働いていたので、タケルの勉強を見て、家事も仕事もとなると、オーバーワーク気味になってしまい……。家庭は常にギスギスした雰囲気で満ちていました」

 みどりさんは何度か夫に「日曜日は家事をまとめてやりたいから、模試の付き添いくらいはやってほしい」と頼んだそうだが、夫の返事はいつも「俺に迷惑はかけないって約束だよな?」だったそうだ。そして、妻子を残し、平気で趣味のゴルフに出かけていたという。

 そして、タケル君が6年生の12月、みどりさんにとっては決定打となる事件が起こる。

「夫がタケルの模試の結果を見て、『塾に行っててこれか!?』と、せせら笑ったんです。『バカは何やってもバカなんだよ。やるだけ無駄!』とまで言ってきて、何もしないくせに、私と息子を蔑むような態度を取る夫が許せませんでした。当然、私は『タケルはこんなに頑張っているのに、その言い方はないでしょう?』って猛抗議したんですが、そしたら、偏差値が何たるかを知りもしないくせに、『こんな偏差値、俺は取ったこともない。本当にコイツは俺の子か?』って」


 そのまま夫婦は大喧嘩に発展したそうだが、一方でタケル君は “今が大詰めの時”ということをわかっていたらしく、戦火に巻き込まれることなく自室に消えて、その日も淡々と課題をこなしていたそうだ。

 しかし、夫婦の諍いはそれだけにとどまらなかった。いよいよ受験本番が始まると、みどりさんにとっては許しがたい夫の言動が炸裂したのだという。タケル君が快進撃を見せて、本命校以外にも超難関校であるK学園に合格を決めた時、なんと夫が「タケル、良くやった! すごいじゃないか? さすがパパの子だ!!」と発言したそうだ。

 「タケル! K学園に行くよな? 当然、K学園だよ!」と言いながら、勝手に入学手続きをしようとした夫に、心底、みどりさんは嫌悪感を抱いたという。

「タケルは、自分で『僕はS学園に行きたい』とずっと言っていて、そのためにこの3年間、努力をし続けていたんです。それを中学受験の偏差値が何たるかも知らない夫がいきなり出て来て、まるで己の手柄のように言うんですから、軽蔑を通り越して、どこか違う星の人が何かを吠えているくらいにしか思えませんでしたね……」

 結局、タケル君は父親の猛反対を押し切って、S学園に入学し、念願だった部活動に勤しみ青春を謳歌しているのだが、みどりさんとその夫は、タケル君の中学入学早々に離婚している。


中学受験は親が9割 最新版