「こんな偏差値、本当に俺の子か?」中学受験生の母が、“無理解な夫”との離婚を決めたワケ
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
「中学受験をすると離婚が増える」とは筆者が放った格言であるが、現実問題として、中学受験は、子どもとの“親子関係”よりも、むしろ“夫婦関係”の方にダイレクトに影響を及ぼすものだと確信している。
中学受験は、今や《ファミリープロジェクト》の観を呈する。一朝一夕では太刀打ちできないものと化しているため、数年にわたる“一家総出の一大プロジェクト”として立ち向かうことが、もはや普通になっているのだ。家族一丸での中学受験は、喩えるならば“戦場”に近いものがあると感じる。知識という武器を得て、実際に志望校という難敵に挑む“兵士”は子どもなのだが、そこには後方支援をする部隊がいなければ、とてもじゃないが戦いを続行することは不可能だ。
後方支援活動は多岐にわたるが、夫婦のどちらかが“安全地帯”にいて、我関せずの姿勢を崩さなかったり、逆に“戦にまったく関係しない問題”を起こした日には、“兵士”の士気に関わりかねない。後方支援任務に孤軍奮闘するその夫婦の片割れの怒りは、とどまるところを知らないだろう。
「バカは何やってもバカ」と言い放った夫に怒り
タケル君の母・みどりさんも、子どもの中学受験に対する夫婦間の温度差に悩まされた過去を持つ。彼女はある名門中高一貫校出身で、その良さを肌身で感じていたため、「自分に子どもが生まれたら、是非とも中学受験をさせよう」と、昔から心に決めていたそうだ。
しかし、みどりさんの夫は「公立中学→公立高校→国立大学」という経歴の持ち主で、塾に通った経験はなく、どちらかと言えば、中学受験には反対派の立場であったらしい。
みどりさんは筆者に、当時の様子をこう語ってくれた。
「確かに夫は『12歳に受験は不要』と言っていて、『もし、どうしてもと言うのならば反対はしないが、その代わり、金も出さない。俺に迷惑をかけない範囲でやってくれ』というスタンスでした。でも、夫が育った田舎の中学とは違い、この地域は、学区の中学が荒れていて、そのせいか中学受験熱が高い。息子のタケルも『あの(公立)中学には行きたくない』と言っていたんですよ。でも夫にいくら今時の事情を話しても、一切、聞く耳は持たなかったですね。それで、私も働いているので、タケルの学費くらいは自分の稼ぎでどうにかできるだろうと思い、塾に通わせ始めたんです」