瀬沼文彰氏インタビュー

「石橋貴明のバブルノリ」が嫌われてしまうワケ――フジ『たいむとんねる』大コケを考える

2018/05/23 14:10

「若者は、バブル的なキラキラした日が、ずっと続くのではなく、“たまにあるといいな”という感覚のようです。リアルが充実していることをアピールしたい半面、『私、すごいでしょ?』と自慢して周りから浮くことを避けたいという思いがあるのでしょうね。バブルを“ネタ”として消費するのも、“これは冗談だよ”と予防線を張っているように思いますし、むしろ、バブル的なキラキラ感を楽しむのではなく、『私はバブルを面白いと思っている』という自分のセンスをSNSでアピールさえできれば、満足なのかもしれません」

 ただし、メディアで騒がれるバブルブームは、「マスコミ主導なブームという印象がある」という瀬沼氏。若者の間で生まれたのではなく、「ノラさんのような影響力のある人から“降りてきた”ものだと思います」。

とんねるずの成り上がり方がバブル的だった

 若者にとって、“周りから浮かない、適度なキラキラ感の自己演出ツール”の1つになっているというバブル。一方で、石橋はなぜ嫌われるのだろうか? まず瀬沼氏は、人々が石橋に感じる“バブル感”を紐解いてくれた。

「『みなさんのおかげでした』でよく見られた“フジテレビの大掛かりなセット”での企画がそういったイメージを生んだのかなと。また、『“イマココ”を最大限楽しむ、先のことを考えない』といったノリや、内輪の業界ネタ、上から目線でガンガンものを言うスタイルなども、バブルっぽいと受け止められるのではないでしょうか。あと石橋さん……というか、とんねるずは、素人として出場したお笑いコンクールで活躍し、デビューを果たしたんですが、そのままの勢いで、素人やアイドル、テレビにあまり出ていない俳優、ときには大御所までもイジる、スタジオを壊して暴れまくるといったノリでどんどん成り上がっていったコンビなんです。その勢いこそバブルノリだと捉えられるのではないでしょうか」

 そんな石橋のバブルノリが若い世代にウケないのは、ズバリ「“冗談だから”“ネタだから”という予防線が張り巡らされていないから」と瀬沼氏は考察を繰り広げる。


「石橋さんが『たいむとんねる』で語った80年代のイケイケエピソードは、視聴者の若者からしたら、直接的すぎてしまい、“ギャグ”に聞こえないと思うんです。もしかしたら本人は、ネタとして言っているのかもしれませんが、視聴者は、ガチの自慢話をされているとしか受け取れないのでは。あと単純に、昔話だから共感できないというのもあると思いますね。それから、いまの若者は、“話している内容+見た目”に面白さを見いだす傾向があり、ノラさんも、あの“見た目”でのバブル感もあるからこそ、若者にウケたと思うんです。そう考えると、石橋さんにはそういった見た目としての面白さは演出できていないので、ウケにくいのかもしれませんね」

ユーモア力の時代―日常生活をもっと笑うために (コミュニティ・ブックス)